米下院は3日、民主党が最重要法案の1つに掲げる選挙改革法案を可決した。今後上院で審議される予定だが、米国における選挙方法を根本から変えてしまう法案であるとして、共和党が猛反発している。
ペンス前副大統領が所属するシンクタンク
『ヘリテージ財団』は、法案のどの部分に問題があるのか、懸念される点をいくつか報じている。例えば、法案は、選挙手続きの多くの重要な部分を州当局から連邦政府に移管し」これまでの分権化を拒否して、中央集権的な選挙プロセスに変えようとするものだと指摘している。
法案はまた、選挙日当日に投票所での有権者登録を可能にしようとしている。しかし有権者登録情報が正しいかどうか、投票資格があるかどうかを確認する照合用データも時間もない状況下で、投票を受け付けることになるため、複数の投票所で登録できてしまうなど、不正行為を容易にすることが懸念される。...
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ペンス前副大統領が所属するシンクタンク
『ヘリテージ財団』は、法案のどの部分に問題があるのか、懸念される点をいくつか報じている。例えば、法案は、選挙手続きの多くの重要な部分を州当局から連邦政府に移管し」これまでの分権化を拒否して、中央集権的な選挙プロセスに変えようとするものだと指摘している。
法案はまた、選挙日当日に投票所での有権者登録を可能にしようとしている。しかし有権者登録情報が正しいかどうか、投票資格があるかどうかを確認する照合用データも時間もない状況下で、投票を受け付けることになるため、複数の投票所で登録できてしまうなど、不正行為を容易にすることが懸念される。法案はさらに、投票所での身分証明書の確認も禁止し、本人であると申告する声明に署名するだけで投票できるように義務化しようとしている。
法案には、有権者登録の自動化も盛り込まれている。しかし、連邦政府レベルの社会保険省、労働省、刑務所局、保健福祉省だけでなく、州政府レベルの自動車免許証や福祉事務所に登録されている人も自動的に有権者として登録されることを求めている。つまり、重複登録だけでなく、不法移民や外国人も自動で登録される可能性が出てくるため、有権者リストの精度を下げてしまうことが懸念される。
法案はまた、登録された有権者の住所を確認するために、州レベルで米国郵政公社の全国住所変更システムを使用することを禁止し、複数の州に登録されている個人を検出するために有権者登録リストを比較する州のプログラムに参加することも禁止し、投票を行っていないことが確認されている登録者を、どれほど古いデータであったとしても登録者リストから削除することを禁止しようとしている。つまり、配達不能の郵便物をもとに登録者リストを更新することや、有権者の適格性を確認することが不可能になってしまう。
民主党はさらに、運転免許証のような公式登録データに結び付けられない、オンライン有権者登録というのも導入しようとしているが、ハッカーやサイバー犯罪者による大規模な有権者登録詐欺を呼び込む危険性が危惧されている。
法案はまた、選挙担当者が投票を監視し、投票所のスタッフを配置し、十分な投票用紙を提供し、選挙の不正行為を防ぐことを可能にする、ほぼすべての州で使用されている選挙区制度を覆して、指定された管区外の有権者によって投じられた投票を数えることを州に要求している。なお、不在者投票の回収は、家族や介護者以外の誰であっても、政治団体や活動家であっても回収できるようになる。
米ニュースサイト『ジョージア・スター・ニュース』共和党の20州の司法長官は、米下院を通過した選挙改革法案は違憲だとして米下院と上院両方の議長に書簡を送ったと報じている。
司法長官らは、米国憲法第1条と第2条では、選挙運営の権限を州議会に与えており、州には大統領選挙を管理する独占的な責任が与えられていると指摘している。また、建国の父たちは、広範囲にわたる議論の後、「大統領の地位と権限が連邦議会に依存することを避けるために、大統領選挙人がどのように選ばれるか」を決定するため、意図的に権力を分割した、と書簡は述べている。
過去の最高裁での判決例も挙げながら、「連邦議会は、例えば、郵便投票や街頭投票による大統領選での投票を州に許可するよう強制することはできない」と指摘している。各州の有権者識別法の廃止、各州の有権者登録を維持する方法の制限、連邦登録データベースの作成など、多くの条項が違憲であると主張している。
書簡は、「おそらく最も悪質なのは、有権者ID法に対する制限である。」と指摘している。現在35の州では、投票するために何らかの形での身分証明書の提出が義務付けられているが、法案ではこれを撤廃しようとしている。
しかし2005年、カーター元大統領と当時のベイカー国務長官が率いる超党派の委員会は、顔写真付き身分証明書の提出を義務付けることが有権者の不正行為を最小限に抑える最善の方法であると認識した。この委員会の支持を受けて、各州は有権者ID法を可決し始めた。2008年には、最高裁がインディアナ州の有権者ID法を支持している。司法長官らは、有権者登録の適切な方法を決定するのは連邦政府ではなく、各州に委ねられているのであり、各州の投票アクセスや不正行為の経験に基づいて決定するべきだ、と主張している。そして、法案は「憲法の構造を覆し、州の資源を奪い取り、選挙手続きに混とんと混乱をもたらし、選挙と統治システムに対する信頼を損なわせる」と訴えている。
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