独裁色の強い国では、反体制派の活動を国際社会に広く知らしめようとするジャーナリストも政権から目の敵にされ、生命の危険にさらされがちである。中国、ロシア、ベラルーシ、サウジアラビア等が特に問題視されているが、この程、インドにおいても、モディ政権の農業政策に反旗を翻す農業従事者の活動を報道しようとした多くのジャーナリストが逮捕・拘留される等、脅威にさらされていると報じられている。
3月3日付
『CBSニュース』:「インドのジャーナリスト、生命の危険にさらされても農民の抗議活動を報道」
インドのTVジャーナリストのバルカ・ダット氏(49歳)は3月3日、『CBSニュース』のインタビューに答えて、目下インドのジャーナリストは、現在まで何ヵ月も続く農民の抗議活動(注1後記)を報じようとすると、当局から妨害や生命の危険にさらされる恐れがあると訴えた。
同氏は、“インドでは現在、ジャーナリストを脅かす具体的な政策が取られており、報道の自由が極端に制限されている”と強調した。...
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3月3日付
『CBSニュース』:「インドのジャーナリスト、生命の危険にさらされても農民の抗議活動を報道」
インドのTVジャーナリストのバルカ・ダット氏(49歳)は3月3日、『CBSニュース』のインタビューに答えて、目下インドのジャーナリストは、現在まで何ヵ月も続く農民の抗議活動(注1後記)を報じようとすると、当局から妨害や生命の危険にさらされる恐れがあると訴えた。
同氏は、“インドでは現在、ジャーナリストを脅かす具体的な政策が取られており、報道の自由が極端に制限されている”と強調した。
同氏と他の8人のジャーナリストが、ユーチューブ動画で“反インド運動を共謀”していると当局から非難されて、ユーチューブ上の動画が先月、強制的に削除された。
しかし、削除される前に、同動画は50万人に視聴されている。
昨年、インドでは67人のジャーナリストが逮捕・拘束されたり、尋問されたりしている。
インドの「世界報道自由度ランキング(WPFI、注2後記)」は、2019年が140位であったが昨年は更に142位まで評価を下げている。
そして、今年に入って既に5人のジャーナリストが逮捕されており、過去三十有余年で最多のペースとなっている。
特に、1月26日の共和国記念日(1950年のインド憲法発布を記念)を境に農民の抗議活動が暴徒化したことから、これを報じようとしたジャーナリストが暴動を扇動した等の罪名で逮捕されている。
ダット氏は、“選挙のたびに政治家は民主主義や自由を訴えているが、現実的にはこれらが失われようとしている”と非難した。
なお、先月には、若手の環境活動家のディシャ・ラビ氏(22歳)も逮捕された。
同氏は、スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏(18歳)がSNS“ツールキット”を使って農民の抗議活動を支援するメッセージを発信するのを助けていた。
トゥーンベリ氏は、バルバドス(カリブ海)出身の歌手・女優リアーナ(33歳)ら数十人の著名人とともに、モディ政権の農業法に反対する農民を支持する活動を3ヵ月以上にわたって推進している。
当局は、ラビ氏を暴動の扇動者で“陰謀の中心人物”だと断定して10日間拘留した。
(注1)農民の抗議活動:モディ政権が昨年9月、農産物の取引自由化を柱とした農業法を制定したことから、大半が小規模経営の農家が反発して開始した抗議活動。同法の下、大企業から買い叩かれたり、米・麦等の主産品の最低価格保証が撤廃されることを懸念して、首都ニューデリー近郊の道路を数千人規模で占拠する等、長期の抗議活動に発展。インドでは農業が国内総生産(GDP)の約15%を占め、また、5億人近い就業者の半数が農業関係に従事しており、インドの一大産業のひとつ。
(注2)WPFI:NGO国境なき記者団(1985年設立、本部パリ)が2002年から始めた各国の報道の自由度評価。2020年の評価対象国は180ヵ国で、上位5ヵ国は北欧が占め、日本は66位、中国が174位で最下位は北朝鮮。
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