地球温暖化によるものなのか、異常気象による自然災害が頻発しており、2020年においても今夏に九州を襲った集中豪雨被害が記憶に新しい。そして、世界を見渡しても、同様の異常気象に伴う大災害が発生しており、死者3千人超、被害総額1,500億ドル(約15兆6,000億円)余りに上ると欧米メディアが報じている。
12月28日付英国
『BBCニュース』:「気候変動:異常気象により2020年も被害甚大」
英国の国際援助団体クリスチャン・エイド(1945年設立、本拠ロンドン)の年次報告によると、2020年において発生した異常気象現象による被害が甚大であったという。
世界は現在、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題に喘いでいるが、多くの人々が自然災害にも苦しめられている。
特に大きな経済的損失をもたらした10件の異常気象現象によって、犠牲者は数千人に上り、多額の保険補償が発生しているとする。
そのうち6件は、中国とインドで発生した大洪水を含めてアジアで起こっており、犠牲者は2千人超、避難民は数百万人、被害額は総額400億ドル(約4兆1,600億円)以上となっている。
特に、中国で6月から10月にかけて発生した洪水被害による被害総額は約320億ドル(約3兆3,280億円)になる。
また、今年5月にインド東部のベンガル湾を直撃したサイクロン・アンファンは、僅か数日で130億ドル(約1兆3,520億円)の被害をもたらした。
インド中西部プネー(マハラシュトラ州)の熱帯気象研究所(1962年設立)の気象科学者ロクシー・マシュー・コール教授は、“アラビア海及びベンガル湾の海水温が30~33℃と史上最高値となっていたので、洋上で発生したサイクロンが異常発達したものと考えられる”とコメントしている。
一方、米国で発生したハリケーン及び山火事による被害総額は600億ドル(約6兆2,400億円)に上っている。
また、アフリカ大陸ではイナゴが異常発生しており、農産物の被害額は85億ドル(約8,840億円)に上っている。
国連の調査結果によると、気候変動によって中東及びアフリカの角地域(アフリカ大陸東端のソマリア全域とエチオピアなどの一部を占める半島)に異常な多雨が降り続いた影響だという。
更に、欧州でも異常気象現象による被害が発生している。
今年2月初めに英国やアイルランドを急襲したサイクロン・シアラによって、犠牲者14人、被害総額27億ドル(約2,808億円)の災害が発生している。
多くの研究者は、気候変動によって異常気象現象が頻発していて、今後更にひどくなる恐れがあると警鐘を鳴らしている。
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(1949年設立の公立大学)気候変動研究センターのサラ・パーキンス=カークパトリック教授は、“2020年の異常気象は大災害をもたらしたが、地球温暖化は今後も進むので、残念ながら更にひどい災害が発生するとみられる”とコメントした。
しかし、クリスチャン・エイドの当該報告執筆者のキャット・クラマー教授は、“2021年は、気候変動問題において大きな行動指針の変化が期待される年となる”としている。
同教授は、“何故なら、ジョー・バイデン次期米大統領が気候変動対策を急ぎ進めるよう世界に訴えており、また、英国が議長国となって国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26、11月1~12日、グラスゴー)が開催されることでもあり、世界が気候変動対策に積極的になると考えられるから”だと言及している。
同日付フランス『AFP通信』:「地球温暖化の影響で、2020年最大の気象災害10件」
クリスチャン・エイドの報告書によると、今年世界で発生した気象災害のうち、特に大きな経済的損失をもたらした10件の合計補償額は、1,500億ドル(約15兆6,000億円)に上っているという。
これは2019年の額を上回っていて、地球温暖化の長期的な影響を表す結果となっている。
これら10件の災害による死者数は少なくとも3,500人で、1,350万人以上が避難を強いられている。
なお、1月にオーストラリアで発生した制御不能の森林火災、11月に大西洋で観測された記録的な数のハリケーン、またアジアでの洪水やアフリカ大陸でのイナゴ大量発生による被害等が保険対象外のため、実際の損失額は1,500億ドルより遥かに多いとみられる。
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