9月11日付米
『AP通信』:「ベラルーシ大統領、反対派の抗議行動に音を上げてロシア支援を得るべく訪ロ予定」
ベラルーシ当局は9月11日、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の退陣を求めて1ヵ月余り抗議活動を行っている反政権派を多数拘束した。
反政権派は、8月9日の大統領選で6選を果たしたとして勝利宣言した同大統領に対して、選挙に不正があったとして、選挙のやり直しを要求してきており、西側諸国もこれを支持している。
現地報道によれば、首都ミンスクの裁判所前で、工場労働者らと連帯してデモ行進を行っていた反政権派の少なくとも9人が拘束されたとする。
ビアスナ人権擁護センター(注後記)によると、ビーツェプスク(北東端の都市)、ホメル(南東端の同国第2の都市)、バラーナビチ(南西端の都市)ではもっと多くの活動家が拘束されたという。
同センターのアレス・ビアリツキー代表(57歳)は、“抗議行動への脅しや活動家の拘束は、週末のデモ行進を予定する前から行われた”と非難した上で、“ルカシェンコは、訪ロ前に抗議活動を制御しているという姿を見せておきたかったのだろう”とコメントした。
そのルカシェンコ大統領は9月14日、ロシアとの連携を模索するためウラジーミル・プーチン大統領を訪ねる予定である。
ベラルーシ当局は、投票日直後から起こった抗議行動に対して、武力を以て厳しい取り締まりを行ったが、反政権運動は鎮まるどころか益々広がりを見せてきている。
そこで当局は、ルカシェンコ政権の交代を求める活動の中心を担っている“調整評議会”の幹部らを拘束して、抗議活動の鎮静化を目論んでいる。
そして、ノーベル賞受賞者のスベトラーナ・アレクシエービッチ氏(72歳、作家・ジャーナリスト、2015年ノーベル文学賞受賞)を除き、ほとんどの幹部が投獄されるか、あるいは強制的に国外追放させられている。
例えば、同評議会のマリヤ・コレスニコワ執行委員(38歳)は9月8日、当局によってウクライナ国境まで連行され、強制的に国外追放されそうになったので、直前で自身のパスポートを破棄したため、追放されず、その代わりに投獄されている。
同氏によれば、当局によって誘拐され、監禁された部屋で、殺してでも国外追放すると脅されたという。
米国や欧州連合(EU)は、大統領選が公平かつ自由ではなかったと非難し、ルカシェンコ政権に対して、反政権側との協議を要求している。
しかし、ルカシェンコ大統領はこれらを拒絶し、西側諸国に対抗すべく、後ろ盾となるようロシア側に支援を求めている。
ロシアはかねてより、ベラルーシとの同盟強化を目論んでおり、一時的にルカシェンコ大統領の反ロシア対応があったものの、プーチン大統領としては、西側諸国と対峙するという政策から、ルカシェンコ大統領を支持し、場合によって抗議活動取り締まりのためにロシア警察を派遣する意向まで表明している。
なお、ルカシェンコ大統領は今週(9月7日の週)初め、地元テレビ局のインタビューに答えて、ベラルーシとロシアの統一という考えは全面否定したものの、ロシアとの同盟強化を強く希望するとコメントした。
同日付ウクライナ『キーウ・ポスト』紙(1995年創刊、当時はキエフ・ポスト):「ベラルーシのルカシェンコ大統領、反対派壊滅のため旧ソ連方式の強制国外追放政策を実行」
ルカシェンコ大統領は、大統領選勝利宣言以降、反政権派の抗議行動に業を煮やし、徹底的な取り締まりに出ている。
特に、直近行っているのは、反対派幹部らを強制的に国外追放しようとするもので、これは旧ソ連でよく行われていた恐怖政治である。
例えば、反対派リーダーのコレスニコワ氏は9月7日に当局によって連行され、ウクライナ国境から強制的に国外追放させられそうになった。
同氏は、急遽自身のパスポートを破棄したために、追放されることはなく、代わって反逆罪で投獄されている。
また、同じくリーダー格のマクシム・ツナック弁護士も9月9日、反逆罪で逮捕・投獄された。
ただ、反対派組織の“調整評議会”の幹部でもある、ノーベル賞受賞者のアレクシエービッチ氏は何故か拘束されていない。
なお、反対派による抗議活動は、8月9日の大統領選以降毎日曜日に10万人以上が動員されて行われてきている。
そしてベラルーシ当局は、9月5日以降拘束した1千人を含めて、既に1万人前後の抗議活動家を拘束している。
一方、ルカシェンコ大統領は9月14日、訪ロの上、プーチン大統領と今後の対応につき協議する意向である。
(注)ビアスナ人権擁護センター:1996年、政治犯やその家族を経済的・法的支援するために立ち上げられたNGO。自身も政治犯だった人権活動家のアレス・ビアリツキー氏が創設。
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