レバノンの首都ベイルートで4日に起きた大規模爆発は、倉庫に貯蔵されていた硝酸アンモニウム2750トンが爆発したものと見られている。仏メディアは、数千トンもの危険な化学物質が市内中心部に保管されていたことは、レバノン国家の腐敗、無能さ、利権政治だけでなく、公共サービスも壊滅的な状態になっていることを物語っていると報じている。
『フランス アンフォ』によると、複数のレバノンメディアが火事は最初、建設現場での溶接作業で発生したと報じているという。
港湾地域の税関長によると、港に近い倉庫に花火が、すぐ隣の倉庫には硝酸アンモニウムが大量に保管されていたという。2013年にジョージア共和国からモルドバの国旗を掲げた船がベイルートに寄港した際、裁判所によってその積み荷が差し押さえられ、そのまま硝酸アンモニウムが保管されるようになったという。...
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『フランス アンフォ』によると、複数のレバノンメディアが火事は最初、建設現場での溶接作業で発生したと報じているという。
港湾地域の税関長によると、港に近い倉庫に花火が、すぐ隣の倉庫には硝酸アンモニウムが大量に保管されていたという。2013年にジョージア共和国からモルドバの国旗を掲げた船がベイルートに寄港した際、裁判所によってその積み荷が差し押さえられ、そのまま硝酸アンモニウムが保管されるようになったという。化学物質の危険性について何度か警告を発したものの港湾管理者は何も対応を取らなかったという。
『レゼコー』は、何千トンもの化学物質が、安全対策が施されることなく、6年間にわたって市内中心部に違法に保管されていたことは、レバノン国家がどれほど崩壊しているのかを描写しているものだと報じている。
この1年で通貨が8割下落し、3月には史上初の債務不履行を宣言したレバノン。金融だけでなく公的機関も麻痺してしまっているという。前回の議会選挙は5年遅れで行われ、大統領の座は2年間もの空席の後、2016年にアウン大統領が当選した。
公共サービスも悲惨な状態にあるという。健康から教育分野、そして公共交通機関まで、横領や不正、利権主義がはびこっているという。公的負債の半分を占めている公共電力は、30年前から誰も腐敗を一掃することできず、汚職の城塞と化しており、電力は1日に数時間しか供給されない。断水は頻繁に起こり、家庭ごみは断続的にしか収集されないなど、市民の生活は楽ではない。
政界は、人口の3分の1を占めるシーア派の武装政治組織であるヒズボラに支配されており、その民兵は国軍よりも強大な力を持っていると言われている。
パリにある「アラブ諸国観測所」の所長であるアントワーヌ・バスブス氏は「ヒズボラは、空、海、陸の国境ですべての輸入品に税金を課し、戦略的な問題を直接管理している。そして自分を豊かにすることを目的とし、それに抵抗する者は排除しようとするような政治指導者達をたてている」と指摘している。
この支配はイランの干渉によるものであり、1975年から1990年にかけてかつて中東のスイスと呼ばれていた国を荒廃させた内戦の遺産であるという。
何よりもすべての公務職への任命は、能力よりも所属する宗教に基づいて任命されるため、例えば内閣も、能力よりも国で公認されている18の宗教からバランスよく構成されることが優先されてしまっている。
『ヨーロッパ1』はベイルート港での壊滅的な爆発は、かつて「中東のスイス」と呼ばれていた国の経済の奈落の底への道を加速させたと報じている。そして産業の弱体化、汚職、政治的混乱の中、国の再建が迅速に進むとは言い難いと指摘している。
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