7月20日付
『ロイター通信』:「中国、アジアに留まらず世界で米軍に対抗すべく強襲揚陸艦を増強」
中国は21世紀に入って以降、超大国の米国に軍事力でもその差を縮めようと国を挙げて取り組んできている。
特に、2012年に就任した習近平(シー・チンピン)国家主席の主導で、人民解放軍(PLA)の近代化に力が注がれた。
そして現在では、ミサイル増産、大型装甲車や軍艦増強によって、中国沿岸に敵が侵攻して来ないよう十分な体制が整いつつある。...
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7月20日付
『ロイター通信』:「中国、アジアに留まらず世界で米軍に対抗すべく強襲揚陸艦を増強」
中国は21世紀に入って以降、超大国の米国に軍事力でもその差を縮めようと国を挙げて取り組んできている。
特に、2012年に就任した習近平(シー・チンピン)国家主席の主導で、人民解放軍(PLA)の近代化に力が注がれた。
そして現在では、ミサイル増産、大型装甲車や軍艦増強によって、中国沿岸に敵が侵攻して来ないよう十分な体制が整いつつある。
その中でも、中国及び西側軍事評論家が異口同音に認めるのが、大型強襲揚陸艦建造及び特別訓練を受けた海兵隊の登用で、周辺国に与える圧力は非常に大きくなっているとする。
具体的には、4万トン級の大型強襲揚陸艦75型(乗員最大900人)の第1船が昨年9月に建造され、第2船が今年4月に完工、更に第3船も建造中と言われている。
中国の公式軍事メディアによれば、PLA海軍は強襲揚陸艦を7隻、もしくはそれ以上保有することになるという。
(編注;米海軍保有の強襲揚陸艦は7隻で、8隻目は現在建造中)
西側軍事評論家の分析によれば、初期段階では30機のヘリコプターを搭載し、そして米軍のF-35Bと同様の短距離離陸・垂直着陸が可能な戦闘機が造れるようになれば、それらを搭載できるよう本艦の甲板を補修していくものと考えられるという。
また、海兵隊については、日本及び米国の軍事分析報告によると、2017年が約1万人だったのに対して、今や2万5千人とも3万5千人とも言われるほど増強されているという。
その中国版海兵隊“蛟龍(ジャオロン)”は、中国南部の海南島(ハイナン)基地に所属していて、国内への喧伝も兼ねて、国営メディアが、厳しい訓練や秀でた戦闘能力などを繰り返し報道している。
同部隊の龔開封(ゴン・カイフェン)司令官は昨年、国営テレビの番組に出演して、“我が部隊は、敵の懐に攻め入る剣先の役割を果たす”と豪語していた。
この強襲揚陸艦と海兵隊の組み合わせについて、米海兵隊(注1後記)の元大佐で、現在はNGO日本戦略研究フォーラム(1999年設立)の上級研究員として、日本の水陸機動団(注2後記)組成に当たって顧問も務めたグラント・ニューシャム氏は、“海兵隊は、強襲揚陸艦がなければ任務の遂行はできない”と説いた。
そして、“戦闘機は敵地に爆弾を投下し、軍艦は海上から陸に向けてミサイルを発射できるが、適地を制圧するためには海兵隊の任務が必須であり、そのため強襲揚陸艦はなくてはならない軍備となる”と付言した。
以上の解説から、中国版海兵隊と新たに建造・就役した強襲揚陸艦の組み合わせは、東アジアにおいて益々脅威となる恐れがある。
特に取り沙汰されているのが、一つの中国原則に基づき、名実ともに中国本土に併合しようと狙っている台湾であり、また、今年になってから、異常なほどの頻度で公船を送りこみ、領海侵犯を繰り返している尖閣諸島である。
軍事評論家は、いずれの島も、中国共産党政権にとって、米国と対峙していく上で、何としてでも掌握しておきたい最前線の砦と考えていると分析している。
先週初め、マイク・ポンペオ米国務長官が、“中国の南シナ海における一方的な海洋進出は、国際法上「違法行為」”だと、これまで以上に厳しく切り込んだ声明を発表した。
同様、台湾への武器支援、また日本との安全保障協力についても折に触れて表明している。
従って、これまで触れた中国版海兵隊及び強襲揚陸艦の組み合わせの脅威に関わり、万一の場合の米国の具体的対応、支援策が注目される。
(注1)米海兵隊:米独立戦争中の1775年設立。海外での武力行使を前提とし、米国の国益を維持・確保するための緊急展開部隊として行動。また、必要に応じ水陸両用作戦(上陸戦)を始めとする軍事作戦を遂行することも目的。本土の防衛が任務に含まれない外征専門部隊であることから、「殴り込み部隊」とも渾名される。現在の規模は、現役将兵約18万人及び予備役約4万人の体制となっている。
(注2)水陸機動団:2013年に策定された2014年度以降に係る防衛計画の大綱に基づき、2018年3月に創設、陸上自衛隊に新編された部隊。現在は約2,100人の将兵が所属しているが、将来は3千人規模まで拡大・充足される予定。島嶼部の奪還など水陸両用作戦を強く意識した部隊であり、報道では「日本版海兵隊」とも称される。
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