共和党が多数派の州でコロナウイルスの感染者が急増する中、これまでマスク着用に否定的だったトランプ大統領が、軍の医療施設を訪問した際、初めて公の場でマスク姿を披露した。ジェローム・アダムス公衆衛生長官もマスクをつけたままインタビューに応じる姿を見せている。米国では、経済活動、学校再開を進める中、コロナ対策の転換が見られている。
7月12日付米国
『Los Angeles Times』は「感染者が増加する中、トランプが遂にマスクを着用。現段階で効果は?」との見出しで以下のように報道している。
日曜のニューストーク番組で、ジェローム・アダムス公衆衛生長官は目しか見えない程大きな白いマスクをつけて登場。コロナ感染拡大を防ぐため、人々にマスクをつけるよう懇願した。時々マスク姿を見せてはいたものの、今回は違っていて、長い間のインタビューでも付けたままだった。その前日、遂に彼の上司で数ヶ月間公の場でマスクをつけるのを拒んできたトランプ氏が象徴的な譲歩をみせた。ウォータリード軍事病院を視察した大統領は集まったメディアに対し、始めてマスク姿の撮影を許可。
フロリダからオレゴンまで感染者が増加しており、トランプの遅い対応により、今後共和党議員や知事が国民へのマスク着用を訴えることになるだろう。今感染者が増加している州の殆どは、共和党知事のもとに経済活動再開が早く、州レベルでのマスク着用要請をしてこなかった州なのである。
これをきっかけに国民の空気も変わるかもしれない。学校の早期再開案など他の政策も批判対象となっている。
感染初期、ホワイトハウスは、トランプがマスクをしない事を擁護、マスク着用が社会的な責任だというメッセージを台無しにしたことを公衆衛生の専門家は嘆いていた。
ジョンホプキンス大学健康安全センター長のThomas Inglesbyは、トランプの心変わりについて「以前から政府レベルでマスク着用をアピールすべきだった。だがこの段階で、最も重要なことは、解決のため先を見据えること。大統領、副大統領、知事らが公の場で正しいこととして、マスク姿を見せることだ。」と述べている。
トランプのマスク非着用を含め、コロナ対策で政権を厳しく批判してきたNancy Pelosi下院議長は、「大統領は密集地でマスクを着用した写真を撮影することで橋を渡った。軍病院の規則に従ったことは良いことだ。感染拡大を抑える事に繋がるため、出来れば彼の態度も変わると良い。」とした。トランプの新たなスタンスにより、政府高官は、マスク推奨傾向になるかもしれないが、全国的に強制するかについては定かではない。
同日付米国『CNN』は「トランプが軍病院で負傷兵訪問時マスクを着用」との見出しで以下のように報道している。
病院訪問前トランプ大統領は記者団に対し「病院内の多くの兵、手術直後の兵などに話しかける時や、特定の場所では、私は多分マスクをするだろう。マスクをするのは非常に良いことだ。マスクに反対したことはないが、時と場所による。」と述べていた。病院内では、マスクをしたスタッフと歩く際等、マスクを着用している姿が確認されたが、マスクをしながらのコメントは無かった。パンデミック後マスコミにマスク姿を見せたのは今回が初めてだった。
以前はマスクは市民の自由を侵害するものとして、政治的火種となっていた。一方、CDCは、ソーシャルディスタンスが保てない場所でのマスクの必要性を指摘し、公の場で布のフェイスカバーを着用するよう要請していた。政府が国民へのマスク着用を推奨した後でも、トランプ大統領は、自身はマスクを使用しようとはしなかった。側近が丁寧に奨めた場合でも、マスクをしたら弱く見え、パンデミックを制御できていない印象を与えるとして反対してきた。
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