トランプ政権の前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)だったジョン・ボルトン氏(71歳、国務次官、国連大使歴任)が、この程補佐官時代の暴露本を出版することになった。再選を目指すドナルド・トランプ大統領にとっては看過できず、司法省をして出版差し止めの仮処分を提訴させている。しかし、この程、原本を入手した米紙が内容を詳報してしまっていて、それによると、同大統領の各国首脳の扱いは、中国以外、日本の首脳も含めて裏の対応は散々だったと記載されているという。
6月18日付
『ロイター通信』、
『ワシントン・ポスト』紙:「前大統領補佐官の暴露本によると、トランプ大統領は他国首脳の扱いが散々」
ジョン・ボルトン前大統領補佐官が出版しようとしている回顧録「ホワイトハウスで起こった様々な事態」について、この程『ワシントン・ポスト』紙が同原本を入手して、内容を詳述した。
それによると、トランプ大統領は、対中国問題もさることながら、日本を含めた多くの主要国首脳との会談に当たって、裏では散々な扱いをしていたとみられる。
<中国>
・昨年6月の主要20ヵ国首脳会議(大阪サミット)において、トランプ大統領は習近平(シー・チンピン)国家主席と会談した際、今秋の大統領選での再選のための支援を要請。
・更に、同大統領は台湾や香港問題はもとより、ウィグル族の人権問題も軽視していて、習国家主席に対して、ウィグル族の強制収容所建設計画について賛同する旨伝達。
<日本>
・日米関係について事前協議した際、同大統領は真珠湾攻撃を引き合いに出して、日本に対して苛立ちを表明。
・一方、安倍晋三首相と会談した際、イランとの協定合意に向けて同首相に支援を要請。
<北朝鮮>
・金正恩(キム・ジョンウン)委員長と盟友関係になると決意した同大統領は、対北朝鮮米制裁に反して、同委員長に贅沢品の贈り物を進呈。
・同大統領自身、非核化問題に余り関心はなく、ただ“国際社会の評判”のみに興味。
・なお、2018年にシンガポールで持たれた初の米朝会談の後、同大統領は自身が用意させたエルトン・ジョン氏のサイン入りCD(ロケットマン収録)が金委員長の元に届いたか何度も質問。
・その贈り物を託されたマイク・ポンペオ国務長官は、訪朝した際、金委員長とは面談できておらず、従って、今も当該CDがどうなったか不詳。
<ウクライナ>
・ボルトン氏は回顧録の中で、トランプ大統領が今秋の大統領選での再選を勝ち取るため、ライバルと目されるジョー・バイデン元副大統領のスキャンダルを暴くよう、ウクライナ側に要求したという疑惑について肯定。
<ロシア>
・同大統領はジェームズ・マティス国防長官(当時)に、ロシアをしてイスラム過激派をうまく手懐けさせるように仕向けることを要求。
<サウジアラビア>
・2018年、同大統領は同国のモハンマド・ビン=サルマン皇太子を擁護する旨表明。
・当時同皇太子には、ジャーナリストで王室批判が顕著なジャマル・カショギ氏暗殺指示の嫌疑。
<トルコ>
・同国のタイイップ・エルドアン大統領がトランプ大統領に、米連邦検察が対イラン制裁違反容疑で調べているトルコ企業は無実だと記したメモを手渡し。
・これに対して、トランプ大統領は、“彼らはオバマ政権下で採用されているが、間もなく入れ替えるから大丈夫”だと伝達。
・一方、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問(同大統領娘婿)が、エルドアン大統領の義理の息子に当たるトルコ財務相に直接電話したこと、そして“義理の息子同士による新たなコミュニケーションチャネル”だとされていると伝え聞いたポンペオ国務長官が激怒。
・同長官としては、“中東和平案が固まっていない中、クシュナーが勝手に国際外交に直接関わることは論外”とし、他にも例があることから問題視。
<英国>
・同大統領がテリーザ・メイ首相(当時)と会談した際、英国は原発依存か、と脈絡もなく不意に質問。
<ベネズエラ>
・同国政治に立ち入ることは“格好良い”と思っていて、同国は“実質的に米国の一部”と見做している。
・米政府としては、フアン・グアイド国民議会議長を同国のリーダーだとし、トランプ大統領もこれを了承。
・しかし、30時間もしないうちに、“いかつい”ニコラス・マドゥロ大統領に比べて同議長がひ弱に見えるとして、支持先を変更しようかと逡巡。
<アフガニスタン>
・米国は同国紛争に18年間も巻き込まれているが、トランプ大統領は、度々同国の大統領が誰であるか勘違い(現職、前職)。
<フィンランド>
・前国務長官のジョン・ケリー氏に、フィンランドはロシアの一部か、と(無知な)質問。
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