5月26日付
『ニューズウィーク』誌:「プーチン大統領に対し、COVID-19最前線で働く医療従事者から怒りの声」
COVID-19最前線で働く医療従事者らが、感染防止保護具不足や約束された特別手当の未支給等を理由に、ウラジーミル・プーチン大統領に対して怒りの声を上げている。
同大統領は4月初め、最前線で働く医療従事者らに対して、医師には特別手当として月約8万ルーブル(1,000ドル、約10万7千円)、看護師、医療補助者、救急車の運転手らには月2万5千~5万ルーブル(300~600ドル、約3万2千~6万4千円)を支給すると発表していた。...
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5月26日付
『ニューズウィーク』誌:「プーチン大統領に対し、COVID-19最前線で働く医療従事者から怒りの声」
COVID-19最前線で働く医療従事者らが、感染防止保護具不足や約束された特別手当の未支給等を理由に、ウラジーミル・プーチン大統領に対して怒りの声を上げている。
同大統領は4月初め、最前線で働く医療従事者らに対して、医師には特別手当として月約8万ルーブル(1,000ドル、約10万7千円)、看護師、医療補助者、救急車の運転手らには月2万5千~5万ルーブル(300~600ドル、約3万2千~6万4千円)を支給すると発表していた。
しかし、ソーシャルメディアに上げられている情報によると、1ヵ月経っても全く支給されていないか、支給されたとしても大統領発表の1%以下だという。
更に、かかる不満の声を公に上げた人たちのところには、警察が事情聴取に押し掛けてきたという。
モスクワ本拠の医師擁護同盟のサイモン・ガルペリン代表は『ニューズウィーク』誌のインタビューに答えて、“COVID-19に感染する医師が他国に比べて非常に多いことを懸念している”とした上で、“しかし、連邦や地方自治政府の役人は、COVID-19治療従事による感染とは認めようとせず、従って責任を取ろうともしない”と非難した。
そして、COVID-19に感染したミハイル・ミシュスチン首相の側近も、特別手当が支給されていない問題を表だって明らかにし、更に、プーチン大統領発令詳細が明確にされていないことから、地方自治政府の役人らが、支払わなくて済む抜け道を探していると不満の声を上げている。
ガルペリン代表も、“地方自治政府の首相や保健相は、特別手当支払いを何とか回避しようと画策している”と同調した。
「プーチンの神秘」の著者で、国際危機グループ(ICG、注1後記)ロシア支部のアンナ・アルトゥニアン上級アナリストも『ニューズウィーク』誌のインタビューに答えて、“大統領令が発令されても、地方自治政府に十分な資金も管理担当要員も提供されていないことが問題”だとした上で、“長い間、ロシアでは医師らは労働者扱いされてきた歴史があり、そのために政府からも手厚い待遇がされない状況にある”とコメントしている。
従って、プーチン政権に抵抗する民主化運動とは異なる形で、特別手当未払いや個人用防護具不足の問題から、医療従事者らによる同政権や地方自治当局に対する深い恨みが倍加してきている。
Change.org(注2後記)プラットフォームで展開された、医療従事者宛に特別手当支給を求める署名運動には11万6千人以上が署名しており、署名者の多くは、“ロシアの医療従事者は、薄給の中から自前の防護具を買うか、買えない場合は感染リスクをおして治療に当たっている“と嘆いている。
『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、プーチン大統領が電話会議で、地方自治政府高官らに対し、医療従事者への特別手当未払いについて“官僚的な怠慢”だと叱責したという。
しかし、ロンドン本拠のシンクタンク、チャタム・ハウス(王立国際問題研究所、1920年設立)のニコライ・ペトロフ上級調査員は『ニューズウィーク』誌に対して、“プーチン大統領の統治システムにほころびが見えてきた証し”とのコメントを寄せている。
(注1)ICG:現場調査に基づいた分析と高度の政策提言を通して、致命的紛争を解決する目的で設立された、国際的非政府組織。1995年に米国で設立され、本部はブリュッセル(ベルギー)。活動主要支部は、ワシントンDC、ニューヨーク、ロンドン、モスクワに置かれ、現地支部が世界18ヵ所に置かれている。
(注2)Change.org:2007年に米国で設立され、現在世界中で4000万人以上のユーザーを持つ、世界最大のオンライン署名プラットフォーム。社会問題などについて、誰もが簡単に署名募集のキャンペーンをサイト上に立ち上げることができ、時には世界中で数十万以上の署名賛同を集め、一国の政府を動かすほどの影響力を持つ。アムネスティ・インターナショナルや動物愛護協会といった団体が請願活動を主催するためのサイトを置いている。
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