インドのナレンドラ・モディ首相は、2月24日から訪印するドナルド・トランプ大統領を、自身の出身地のインド西部グシャラート州で手厚く持てなす意向である。しかし、米国との連携強化を望む同首相にとって、同大統領歓迎行事において最高の演出をしたいところだが、2002年グシャラート州暴動(注後記)を契機とした反イスラム主義政策で非難を浴びており、果たして思惑通り市民が両首脳を歓迎してくれる不確かである。同首相としては、トランプ氏対応をうまくこなしている安倍晋三首相にアドバイスを求めたいところではないだろうか。
2月22日付米
『AP通信』:「モディ首相、トランプ大統領歓迎行事を通じて自身のイメージアップ戦略に挑戦」
ナレンドラ・モディ首相は、2月24日から訪印するドナルド・トランプ大統領を、自身の出身地のインド西部グシャラート州で歓迎する。
実は、同首相が昨年訪米した際、同大統領が仕掛けたのか、訪問先のヒューストン(テキサス州)でエルビス・プレスリー並の大歓迎を受けていた。
そこで、同首相としても、自身の生まれ故郷で、大歓迎を演じる必要があると考え、訪問先のアフマダーバード(同州々都、人口720万人)市街地に1,400万ドル(約15億4千万円)を注ぎ込んで舞台作りをした。...
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2月22日付米
『AP通信』:「モディ首相、トランプ大統領歓迎行事を通じて自身のイメージアップ戦略に挑戦」
ナレンドラ・モディ首相は、2月24日から訪印するドナルド・トランプ大統領を、自身の出身地のインド西部グシャラート州で歓迎する。
実は、同首相が昨年訪米した際、同大統領が仕掛けたのか、訪問先のヒューストン(テキサス州)でエルビス・プレスリー並の大歓迎を受けていた。
そこで、同首相としても、自身の生まれ故郷で、大歓迎を演じる必要があると考え、訪問先のアフマダーバード(同州々都、人口720万人)市街地に1,400万ドル(約15億4千万円)を注ぎ込んで舞台作りをした。
すなわち、同市目抜き通りの至る所で市民に両国国旗を持たせて手を振らせるようにし、スラム街を覆い隠す壁を建て、野良犬は全て捕獲し、異国情緒のある木々を植え、更には、新設クリケット場を突貫工事で完工させるという。
同大統領は、同首相が600万人とも1,000万人とも言われるインド市民で歓迎すると約束したと喧伝している。
しかし、同州当局筋としては、10万人がせいぜいとみている模様である。
何故なら、同首相の支持者と不支持者とが真っ二つに分かれているからである。
支持者は、同市の貧しい紅茶売りの息子がインドのトップにまで出世したことを誇りに思っている。
一方、不支持者は、同首相が同州首相時代に発生した2002年グシャラート暴動で少なくとも1千人が犠牲になったのに、これを防ぐどころか黙認していたことを依然許せないと考えており、更に、昨年同首相が導入した新市民権法でイスラム教徒を除外したことでイスラム系市民等から大反発を受けているからである。
なお、肝心の首脳会談の主要議題についても、同首相にとっては頭痛の種である。
すなわち、インドとしては、景気を押し上げるために米国との経済連携を強化したいと考えるが、例によってトランプ大統領は、“米国はインドとの通商で割を食っている”として、インド側に様々な要求を突きつけようとしているからである。
同日付インド『NDTV(民放テレビ)』:「インド、“トランプ大統領歓迎行事”で米印関係深化を期待」
トランプ大統領は2月24~25日、就任後初めて訪印する。
この機会に米印関係強化を目論むモディ政権は、“ナマステ・トランプ(ナマステはサンスクリット語のこんにちは、でトランプ氏歓迎の意)”計画を立てて同大統領を大歓迎する意向である。
実は昨年9月、モディ首相が訪米時、訪問先のヒューストンで5万人のインド系米国人から“ハウディ・モディ(英語のこんにちは、でモディ氏歓迎の意)”の掛け声とともに大歓迎を受けていた。
そこで、インド側としても、“ナマステ・トランプ”で何とか返礼したいと考えている。
具体的行事としては、訪問地のアフマダーバード市目抜き通りで大勢の市民が歓迎し、そして新設されたばかりの世界最大のモテラ・クリケット場(収容人員11万人)で、“ナマステ・トランプ”歓迎式典を催す意向である。
なお、両首脳は2月25日、1,450億ドル(約15兆9,500億円)に上る両国貿易について交渉予定であるが、具体的進展は望めそうもない。
(注)2002年グシャラート州暴動:インド西部グジャラート州の最大都市アフマダーバードで、2月27日に起きた列車放火事件を機にイスラム教徒へのヒンズー教徒の報復事件が続発し、全国に広がった暴動事件。ヒンズー教徒とイスラム教徒双方合わせて1000人以上死亡する事件を黙認したとして、同州のモディ政権(当時)は西側諸国から「犯罪政権」と見做された。
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