2月16日付
『AP通信』:「南シナ海をめぐる近況」
<日本、中国漁船侵入に備えるためインドネシアに漁業取締船を供与>
日本政府は、南シナ海のインドネシア領海(北ナトゥーナ海)付近に出没する中国漁船警戒のため、インドネシア政府に対して、船齢27年の中古船及び沿岸警備体制強化用資金を供与することとした。
在インドネシア日本大使館の清水和彦参事官(経済担当)は2月14日の記者会見において、総トン数741トンの“白嶺丸(1993年建造、水産庁所属の漁業取締船)”が、インドネシアの漁船活動等を助け、“インド太平洋を自由で開かれた海”にするために役割を果たすことを望んでいると語った。
『共同通信』報道によると、同参事官は、“最近インドネシアは中国漁船の違法操業の被害を受けている”とした上で、“本船がインドネシア漁業省に不足している大洋における監視船の役割を果たすだろう”とコメントしている。
なお、日本政府は、インドネシアの沿岸警備艇増強のために22億円(2千万ドル)を供与することになっている。
<米軍、中国軍機による台湾異常接近飛行に対抗して戦闘機を台湾上空に派遣>
米空軍は、直近で中国軍機が台湾上空に異常接近してきたことに対抗するため、大型爆撃機B-52を2機台湾海峡に派遣した。
台湾国防省は先週、米軍輸送機MC-130JコマンドⅡが台湾海峡を北から南に向けて飛行し、更にB-52爆撃機も同様のルートで飛行した旨発表している。
なお、この直前、中国の戦闘機、爆撃機等の一団が台湾海峡からバシー海峡(台湾とフィリピンの間)に向けて飛行し、更に、台湾上空を旋回飛行してきたことから、台湾軍機がスクランブル発進していた。
米国は、台湾と正規の国交がないものの、米国内法で台湾への脅威となる行為に対抗措置を取ることを決めており、中国軍機の異常行動を非難している。
<フィリピン、米国との安全保障に関わる協定破棄の手続きに着手>
ロドリゴ・ドゥテルテ政権は2月11日、「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」を失効させるべく、180日事前通告を行う手続きに入ると表明した。
フィリピンと米国は69年もの間、相互に軍事協力する同盟国となってきている。
しかし、米政府が、ドゥテルテ大統領の盟友であるロナルド・デラ・ローサ上院議員に対して入国ビザを発給しないとの決定をしたことに憤って、同大統領がVFA破棄を宣言していた。
同大統領は2016年に就任以来、しばしば米国の安全保障政策を批判し、一方で、中国やロシアとの関係強化の姿勢を見せてきている。
なお、フィリピン政府の対応についてマーク・エスパー米国防相は、“不幸な”行動で、“間違った方向に向かっている”とコメントした。
<新型コロナウィルス集団感染問題で東南アジア向け中国人旅行者激減>
中国発の新型コロナウィルス感染問題によって、東南アジアが中国人観光客の減少に喘いでいる。
米IHSマーキット社(コロラド州に本拠を置くIT企業、1959年設立)によると、2018年における中国人の海外渡航者数は約1億5千万人で、2,770億ドル(約30兆4,700億円)を消費しており、2002年時の154億ドル(約1兆6,940億円)より遥かに増えているという。
米フォーワードキーズ社(2010年設立の旅行コンサルタント企業)によると、春節(旧正月、今年は1月25日~)の時期に海外旅行する中国人観光客の75%が東南アジアを訪問すると言われており、今回の新型コロナウィルス感染問題が与える影響は計り知れないものとみられる。
例えば、タイ旅行・スポーツ省のピパット・ラチャキットプラカン大臣は『AP通信』のインタビューに答えて、1月から6月までの期間で見て、中国人観光客が消費する金額が97億ドル(約1兆670億円)減少するとみているとコメントした。
なお、中国による観光や融資・投資支援によって、東南アジア諸国連合(ASEAN)内において、南シナ海での領有権問題で対立する一部加盟国の対中国対抗意識を弱めることに貢献してきたことは事実である。
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