米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は23日、毎年発表している地球滅亡までの時間を示す「終末時計」を公表した。時刻は昨年の残り2分から20秒進んで残り100秒となり、公表を開始した1947年以降で最短となった。
『AFP通信』や米
『FOXニュース』、英紙
『ガーディアン』など多くのメディアが報じた。科学者らは同誌で、核戦争や気候変動などの脅威が高まり、これに対する世界の指導者らの国際的な取り組みが後退していることにより、危機が最高水準にあると強調した。
核戦争について同誌は、過去半世紀にわたって地球滅亡の回避に貢献してきた軍縮の枠組みが、現在崩れていると指摘している。米国とロシアは昨年、中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を通告し、同条約は失効した。米国はまた、ロシアとの間の新戦略兵器削減条約(新START)の延長をしない意向を表明している。
さらに、米国とイランとの対立が深まってイランは核開発を推し進めており、2015年の核合意が完全に崩壊する可能性がある。北朝鮮についても、当初はトランプ米大統領の政策に期待が寄せられたが、その後実質的な進展はなく、北朝鮮は新たな戦略兵器の開発を進めているとした。
気候変動については、2015年のパリ協定に沿った地球温暖化防止の目標達成は困難となっており、各国で記録的な熱波や洪水、森林火災などの異常気象の現象が表れている。若者らのデモなどにより意識が高まったが、各国政府による効果的な対策が取られていない。
現在の世界情勢は、情報戦争や、人工知能(AI)などを使用して極めて高度に合成されたディープフェイク動画・音源による偽情報の蔓延、宇宙空間やサイバー空間の軍事化、極超音速兵器やドローン兵器といった新技術などによって複雑化し、極めて不安定となっており、危機の水準はこれまでになく悪化したとしている。
ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツの終末時計の時刻は、13人のノーベル賞受賞者を含む専門家パネルが決定している。公表が始まった1947年には、残り時間は7分だった。これまでの最短時間は1953年、2018年、2019年の2分で、最長時間は冷戦終結後の1991年の17分だった。同誌のレイチェル・ブロンソン社長兼最高経営責任者(CEO)は、今年の残り時間100秒について、「我々は世界がどの程度滅亡に近づいているかを、今や時間単位や分単位ではなく秒単位で表現している。」と説明した。
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