欧州連合(EU)からの早期離脱を目指す英ブレグジット党(離脱党)のナイジェル・ファラージ党首は11日、来月12日に行われる英議会総選挙(650選挙区)で、ボリス・ジョンソン首相率いる与党・保守党が、2017年の選挙で議席を獲得した317の選挙区には、自党候補者の擁立を見送ることを表明した。ファラージ氏自身は選挙に出馬しない。
『ロイター通信』や英
『BBC』『ガーディアン』などによると、ファラージ氏の発表により、離脱派の票が分散されなくなり、ジョンソン氏と保守党にとっては追い風となりそうだ。首相続投の可能性が劇的に高まり、最終的には、2016年の国民投票の結果を受けた公約通り、EU離脱を果たす可能性も高まると報じられている。
ブレグジット党は結党以来1年未満の党であり、まだ国会議員はいない。但し、5月に行われた欧州議会選挙では、29議席を獲得して第1党となった。ファラージ氏は、これまで保守党議員の選挙区に候補者を立てる方針を示していたが、これを撤回した。
ファラージ氏は、EUからの離脱達成は危機的状況にあり、ブレグジット党は離脱に反対する野党・労働党や自由民主党などの議席を奪うことに集中するとしている。同氏は11日、ブレグジット党は「2017年の政権公約を完全に破棄した労働党の全ての議席を奪うことに全精力を集中する」「我々はまた、他の政党の議席も取りに行く」と述べた。
ジョンソン首相はファラージ氏の発表を歓迎した。発表を受けて英ポンドは米ドルに対し1%値上がりし、ユーロに対しても過去6カ月で最高の水準にまで上昇している。労働党のジェレミー・コービン党首は、ファラージ氏の方針転換により、保守党と離脱党が共闘すれば、ファラージ氏の友人であるトランプ米大統領の願いを叶えると指摘した。
強硬な離脱方針を掲げるファラージ氏は当初、ジョンソン氏の協定案は離脱ではないと非難し、ジョンソン氏が「合意なき離脱」に踏み切らない場合、600人の候補を擁立し、保守党の勝利を潰すと警告していた。しかし、対立により離脱そのものの実現が消滅することを恐れた支持者から強い圧力があり、ジョンソン氏が移行期間を延長せず、離脱を2020までに完了させるとの方針を鮮明にしたことなどを受けて、今回の決断に至った。
ファラージ氏の方針変更は、保守党出身の首相の政策に常に強い影響を与えてきた同氏にとって珍しい妥協だ。EU離脱の是非を問う国民投票について、2013年に当時のキャメロン首相に実施を決断させた背景には、やはり同氏など欧州懐疑派の力があった。
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