ポーランドでは13日に総選挙が実施され、上下両院で投票が行われた。この結果、欧州連合(EU)懐疑派でポピュリズム政党の右派与党「法と正義(PiS)」が下院で単独過半数を維持することが判明した。同党は2015年に政権を獲得したが、今後さらに4年間同国政治を担うことになる。
『AFP通信』『ロイター通信』英
『BBC』などによると、PiSは2015年に政権を獲得して以来、子ども手当の支給や低所得者層への減税、年金額や最低賃金の引き上げといった社会保障制度などの充実により、公約を実現する政党として、家族層や農村部の貧困層などからの支持を伸ばしてきた。一方、伝統的なカトリックの考え方に背くとしてLGBT(性的少数者)に対する攻撃的な姿勢を強め、西欧の民主主義の価値観を否定することにより、ポーランド社会に分断をもたらしている。
調査会社イプソスの出口調査では、PiSの下院選挙(定数460)の得票率は43.6%で、239議席程度を獲得する見込みとなった。中道政党の市民プラットフォーム(PO)中心の連合は27.4%(131議席)、左派連合は12.4%(46議席)であり、野党を圧倒した。その後開票が進み、PiSの得票率は43.6%(235議席)で過半数の維持が確定している。
イプソスによれば、昨年結成された極右の自由主義政党の連合コンフェデレーションの得票率は6.4%(13議席)、ポーランド農民党とクキズ15の政党連合は、9.1%(30議席)程度になる見込みだ。
総選挙の投票率は、1989年のポーランドの民主化以降で最高となる61.1%に達する見通しだ。PiSの政策に反対し、同国の民主主義の将来に懸念を持つ人々と支持派の間の政治的な分極化が、選挙への関心につながっているという。
PiSのヤロスワフ・カチンスキ党首は、首都ワルシャワの同党本部で支持者らに勝利宣言を行い、「我々にはこの先4年間の大変な仕事が待っている。ポーランドはさらに変化しなければならない。そして良い方へと変わらねばならない。」と述べた。
専門家らは、PiSの勝利により同党は司法改革を進め、司法の独立や法の支配などが損なわれる恐れがあり、EUとの対立がさらに生まれるとして警告している。ワルシャワ大学の政治学者アンナ・マテルスカ・ソスノフスカ氏は、選挙の最終結果によってPiSの過半数が確定すれば、同党は自由民主主義をさらに制限することが予想されると指摘した。
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