目下、近年最大級を言われる台風19号が日本列島を襲っている。
テレビニュースによると、多摩川も増水した濁流で溢れんばかりである。
そこで思い出すのが、2007年9月初めに首都圏を直撃した台風9号のために増水した多摩川で、東京消防庁等が河川敷に起居していたホームレス(注後記)の人たちを救助したニュースである。
あれから12年経った今でも、JRや京急線に乗車すると、多摩川河川敷で起居するホームレスの人たちが以前と変わらず認められていたため、今回の台風19号の襲来で前以て避難ができたのか懸念される。...
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目下、近年最大級を言われる台風19号が日本列島を襲っている。
テレビニュースによると、多摩川も増水した濁流で溢れんばかりである。
そこで思い出すのが、2007年9月初めに首都圏を直撃した台風9号のために増水した多摩川で、東京消防庁等が河川敷に起居していたホームレス(注後記)の人たちを救助したニュースである。
あれから12年経った今でも、JRや京急線に乗車すると、多摩川河川敷で起居するホームレスの人たちが以前と変わらず認められていたため、今回の台風19号の襲来で前以て避難ができたのか懸念される。
日本におけるホームレス人数は、厚生労働省/社会・援護局の2019年1月時点の調査結果では、4,555人と昨年より▼422人減少しているという。
最も多かったのは東京都1,126人、大阪府1,064人、神奈川県899人となっている。
これらの調査は、2002年施行の「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」に基づき、同法に基づく支援等の効果状況を測るために毎年実施されている。
実際、同法施行前の2001年時の調査では、全国に24,090人(うち東京都5,712人、大阪府9,462人、神奈川県2,032人)となっていたことから、現在では8割余りも減少しており、効果は表れているものと言える。
卑近な例だが、かつて大阪城公園には日本最大と言われるホームレス村(ブルーシートの小屋群)が実在していたが、自治体等の努力によって2011年にはすっかりなくなっている。
2000年代初め、筆者の仕事の取引先の中国企業幹部連(いずれも当時の地方の共産党員)に大阪を案内した際、当時はまだ経済発展途上であった中国であるが、自国の貧困層を見知っていない当該幹部連が、先進国日本のホームレスが珍しいと写真を撮ろうとしたので、慌てて止めてもらった覚えがある。
なお、世界を見渡せば、国連人権委員会の調査で1億人余りのホームレスがおり、貧困のみならず、内戦による避難民が増えていることから、有効な減少政策を講じられない事情がある。
国別にいうと、ナイジェリア2,440万人、インド2,300万人、インドネシア2,280万人、コロンビア950万人、シリア560万人(国外避難民含めて)、フィリピン450万人、更に欧州合計でも300万人のホームレスが報告されている。
また、世界最大の経済大国の米国でも、米住宅開発省の調査によると、ホームレスが全米で55万人にも上るという。
ニューヨーク、ロス・アンゼルスの2都市で13万人余りとされていて、ドナルド・トランプ政権下、未曾有の景気継続を果たしているとは言え、地方のみならず、大都市圏に暮らす弱者への救済が不十分である実態がみてとれる。
直近のロス・アンゼルス地元紙報道で、同市地下鉄で起居するホームレスの女性(旧ソ連のモルドバ共和国から移民してきた51歳の元演奏家の女性)が、同市警や市議の支援で歌手デビューする話が報じられていた。
9月下旬に彼女が地下鉄のホームで歌っている姿に感動した同市警察官がツイッターに上げたところ、瞬く間に評判になって、10月初旬に音楽番組で歌を披露することになったという。
彼女への支援募金も始まっているそうで、千載一遇のチャンスを得たと言えようが、だからと言って、残りの55万人のホームレスにすぐさま光が当てられるかは疑問と言わざるを得まい。
その米国と比較しても、日本のホームレス対策は、地道ながらかなり成果を上げていると言えよう。
因みに、世界の大都市のホームレス人数は以下と報告されている。
①マニラ(フィリピン)8万人、②ニューヨーク7万9千人、③ロス・アンゼルス 5万人、④モスクワ4万9千人、⑤メキシコシティ3万人、⑥ジャカルタ(インドネシア)2万8千人、⑦ムンバイ(インド)2万5千人、⑧ブエノスアイレス(アルゼンチン)1万5千人、⑨サンパウロ(ブラジル)1万1千人、⑩ブタペスト(ハンガリー)1万人
(注)ホームレス:法の定義では、都市公園・河川・道路・駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者、とされている。
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