米中両国は、来月に控える貿易交渉での進展を図るべく、それぞれ発令していた追加関税賦課措置を一時取り止める措置を講じている。しかし、中国当局は、水面下で様々な対外政策を講じている。そのひとつが、中国の政策に敵対する米国や豪州の市民権を持って、中国を訪問してきた旅行者らを多数“出国禁止措置”とすることである。実際に拘束するのでないので、多額の費用はかからず、しかし、いずれかの機会に敵対国との交渉カードに使う等目論んでいるとみられる。
9月14日付
『USAトゥデイ』紙:「中国系米国人姉弟、中国訪問中に拘束され、“帰国が絶望的”な状態に」
中国系米国人のシンシア&ビクター劉(リウ)姉弟は、2018年6月に中国に入国して以来、中国当局から“出国禁止措置”とされている。
当時、一緒に訪中した母親のサンドラ漢(ハン)とともに中国在の親戚を訪ねた次第だが、母親が当局によって拘束されてしまったことから、国内の移動の自由は認められても米国に帰国することができなくなってしまった。...
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9月14日付
『USAトゥデイ』紙:「中国系米国人姉弟、中国訪問中に拘束され、“帰国が絶望的”な状態に」
中国系米国人のシンシア&ビクター劉(リウ)姉弟は、2018年6月に中国に入国して以来、中国当局から“出国禁止措置”とされている。
当時、一緒に訪中した母親のサンドラ漢(ハン)とともに中国在の親戚を訪ねた次第だが、母親が当局によって拘束されてしまったことから、国内の移動の自由は認められても米国に帰国することができなくなってしまった。
姉弟らのニューヨーク在の代理人のデビッド・プレスマン弁護士によると、姉弟はそれぞれ、ニューヨーク企業への就職やジョージタウン大学(首都ワシントン近郊にある1789年設立の私立大学)での進級の予定であったが、それも許されず、“帰国が絶望的”となっていて、現在はとても途方に暮れているという。
この背景には、父親である劉昌民(リウ・チャンミン)が中国交通銀行(1908年創立の商業銀行、本社は上海)幹部だった時に14億ドル(約1,500億円)の不正融資に関わったとされたが、2007年に国外逃亡して当局の訴追を免れているという事態がある。
つまり、中国当局は逃亡中の父親に出頭させるために家族を人質に取ったとも言える。
同様のケースは、同じく中国系米国人のホアン王(ワン)にも当てはまる。
彼女は2013年12月に訪中した際に、中国当局に逮捕されて以来、これまでずっと拘束されたままである。
ジョージタウン大学法科大学院のアジア法センターのトーマス・ケロッグ代表によると、ホアン王は当局によって“でっち上げられた”容疑で逮捕されているとし、この背景には、彼女の夫と義父に関わる事件があるという。
義父は元中国中央政府の常務委員だった周永康(チョウ・ヨンカン)で、習近平(シー・チンピン)国家主席が推し進めた反腐敗政策の下、汚職容疑で逮捕・起訴され、無期懲役刑で拘禁されている。
ケロッグ代表は、中国当局は以前から、人権活動家らの中国人を逮捕したり、出国禁止にしているが、習政権になってから、米国人等の外国人に対しても、訪中した際に拘束したり、出国禁止措置を取ることが増えているとコメントしている。
米国務省も今年1月3日、中国への渡航者に対して、中国当局から出国禁止にされて何年も拘束される恐れがあるとの警告を発している。
この背景には、米中貿易紛争激化も含めた、米中間関係悪化があるとしている。
一方、米国に続いて中国と対峙する態度が鮮明になりつつある豪州に対しても、同様な事態が起きている。
例えば、中国系豪州人の元暁亮(ユァン・シャオリャン)は、彼女の夫の豪州人楊恒均(ヤン・ヘンチュン)とともに、今年1月から8ヵ月も拘束されたままである。
彼女の場合は、何ら拘束される容疑はないが出国禁止措置が取られ、また、夫については、中国政府に批判的な著書を発表していたことからか、中国当局は彼をスパイ容疑で逮捕し、人権派弁護士等からの接触もできないようにして収監したままである。
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