2009年1月にニューヨークで発生した、バードストライク(注後記)によりエンジン停止した航空機がハドソン川に不時着することで、一人の犠牲者も出さなかった事故は、後に“ハドソン川の奇跡”と呼ばれ、2016年にはクリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演で映画化されている。そしてこの程、ロシアにおいても、離陸直後の国内機がバードストライクによるエンジン停止に遭った直後、飛行場近郊の畑に不時着する事故が発生したが、幸い一人の犠牲者も出さなかった。
8月15日付米
『AP通信』:「バードストライクに遭った航空機の機長、不時着成功で称賛」
ロシアのウラル航空178便が8月15日、モスクワのジュコーフスキー空港を離陸直後、カモメの群れと衝突してエンジン停止の事態となり、滑走路から5キロメーター(3マイル)のトウモロコシ畑に不時着した。
同便はクリミア半島のシンフェロポリ行の国内線で、乗客226人、乗員7人が搭乗していたが、5人の子供を含め23人が病院に搬送されたものの、幸い一人の犠牲者も出さなかった。...
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8月15日付米
『AP通信』:「バードストライクに遭った航空機の機長、不時着成功で称賛」
ロシアのウラル航空178便が8月15日、モスクワのジュコーフスキー空港を離陸直後、カモメの群れと衝突してエンジン停止の事態となり、滑走路から5キロメーター(3マイル)のトウモロコシ畑に不時着した。
同便はクリミア半島のシンフェロポリ行の国内線で、乗客226人、乗員7人が搭乗していたが、5人の子供を含め23人が病院に搬送されたものの、幸い一人の犠牲者も出さなかった。
ロシア連邦航空局のアレクサンダー・ネラトゥコ局長は記者会見で、離陸直後に非常事態に遭遇したにも拘らず、乗員が“唯一の的確な決断”を下して無事にやり遂げたと称賛し、国家として最高の栄誉を授与することになろうと語った。
ウラル航空によると、同機のダミール・ユスポフ機長(41)は、総飛行3千時間超のベテランで非常に優秀なパイロットだという。
ロシア大統領府のドミートリー・ペスコフ報道官も、機長らは“英雄”だとして、国家栄誉賞が授けられようとコメントした。
なお、航空機のエンジンはバードストライクに耐えるような設計となっているが、鳥の群れが衝突してきた場合は、深刻な事態を引き起こす場合がある。
そこで、空港周辺では、様々な鳥撃退装置を備えているが、いつも奏功するということではない。
2009年には、ニューヨークのラガーディア空港を離陸したばかりのUSエアウェイ機が、雁の群れに衝突して2つのエンジンが停止し、止む無く空港近くのハドソン川に非常着水する事故が発生している。
犠牲者を一人も出さなかったことから、“ハドソン川の奇跡”と呼ばれ、後にハリウッドで映画化もされている。
同日付ロシア『タス通信』:「ロシア政府、バードストライクに遭った航空機を無事に不時着させたパイロットを称賛」
同機に搭乗していた乗客の一人は、ユスポフ機長らの対応は機敏で、また、不時着の際もさほど衝撃はなく、誰も怪我をしなかったと思うと語った。
ロシア非常事態省によると、17人の子供を含めた55人が治療を必要としたが、病院に搬送されたのは6人だけで、一人の犠牲者も出なかったという。
ロシアの事故調査委員会が事故原因等の調査に着手している。
国営グロモフ飛行研究所の関係者が『タス通信』に語ったところによると、ジュコーフスキー空港の鳥撃退装置は正常に稼働していたという。
しかし、同空港周辺には違法なゴミ投棄がなされていて、鳥が多く集まってきており、同機が離陸しようとした際、滑走路にいた鳥の群れをエンジンに巻き込んでしまった可能性があると指摘している。
なお、大統領府のペスコフ報道官は、空港周辺での違法投棄について、“厳しい処罰”が下されることになろうとコメントしている。
(注)バードストライク:鳥が人工構造物に衝突する事故。 主に航空機と鳥が衝突する事例を指すことが多い。この他、鉄道や自動車といった乗り物、風力発電の風力原動機、送電線や送電鉄塔、ビル、灯台などにおいても起きている。
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