8月6日付米
『ロイター通信』:「ドゥテルテ大統領、ついに習国家主席と2016年南シナ海領有権問題の判決について協議」
フィリピン大統領府のサルバドール・パネロ報道官は8月6日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が今月末に習近平国家主席と直接会って、PCAによる2016年判決について協議する予定であると発表した。
ドゥテルテ大統領の支持率は約80%と依然高い数値を示しているが、一方で、就任後3年経っても中国側と南シナ海領有権問題について正式に交渉していないとして、反発する声が多くなってきている。...
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8月6日付米
『ロイター通信』:「ドゥテルテ大統領、ついに習国家主席と2016年南シナ海領有権問題の判決について協議」
フィリピン大統領府のサルバドール・パネロ報道官は8月6日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が今月末に習近平国家主席と直接会って、PCAによる2016年判決について協議する予定であると発表した。
ドゥテルテ大統領の支持率は約80%と依然高い数値を示しているが、一方で、就任後3年経っても中国側と南シナ海領有権問題について正式に交渉していないとして、反発する声が多くなってきている。
就任以来同大統領は、親中路線に転換し、領有権問題を横に置いて、代わりに中国側から200億ドル(2兆円)余りの経済援助を獲得してきていた。
しかし、反ドゥテルテ派は、この援助のほとんどが具体化されておらず、同大統領は中国に騙されていると非難している。
そしてこの程、現政権を慌てさせる以下の事態が外交問題として明らかになった。
・南シナ海でフィリピンが実効支配する島嶼周辺に、100隻余りの中国の“漁船団”が進出して一斉に漁を実施。
・7月にも、何の事前通知もないまま、5隻の中国軍艦がフィリピン領海の12海里(約22キロメーター)内に侵入。
なお、先週末に開かれた東アジア安全保障外相会議において、マイク・ポンペオ米国務長官が、中国の海洋進出等について厳しく非難していること、また、同じく領有権を争うベトナムも中国に対して対抗していく態度を示している。
かかる背景から、ドゥテルテ大統領としても、これまで横に置いてきた2016年PCA判決について、習国家主席に直談判すべき時機が到来したと判断したものとみられる。
ただ、パネロ報道官の言葉を借りれば、同大統領は習氏との交渉で、十数年前に立ち消えとなった中・フィリピン共同資源開発計画について持ち出す意向だと言及している。
同日付フィリピン『マニラ・ブルティン』紙:「ドゥテルテ大統領、北京を訪問して南シナ海領有権に関わるPCA判決につきついに協議へ」
パネロ報道官は8月6日、ドゥテルテ大統領が今月末、“ついに時機が到来”したとして、北京を訪問の上、習国家主席と2016年PCA判決について協議することになると発表した。
ドゥテルテ大統領が就任直後の2016年7月、ハーグのPCAが中国側主張を否定し、フィリピン側有利の判決を下したが、同大統領は、時機が来るまで本件は横に置いて、中国側とはまず経済・外交面での協力関係構築を優先する方針を取ってきた。
なお、パネロ報道官は、何故時機が到来したのかとの記者団の質問に答えて、任期の半分(3年)が経過して、同大統領がその時機が来たと判断したからだとコメントした。
但し、同報道官は、同大統領が、フィリピン西側沖に大挙してきている中国船団を退去させるよう中国側と交渉するのか、との問いに対しては、同大統領の考え次第であるとのみ答え、コメントを留保した。
(注)PCAの2016年7月の判決:概要は以下のとおり。
① 中国による九段線で囲まれた海域に対する歴史的権利等の主張は、国連海洋法条約に反するもので認められない。
② スカボロー礁、ガベン礁(北側の礁のみ)、ケナン礁(ヒューズ礁を含む)、ジョンソン南礁、クアテロン礁及びファイアリー・クロス礁は、いずれも「岩」であり、12カイリの領海のみを有する(EEZ及び大陸棚を生成しない)。
③ 南沙諸島の「高潮高地」(例えば、イツアバ島[8]、パグアサ島、ウエストヨーク島、スプラトリー島、ノースイースト島、サウスウエスト島)はいずれも、国連海洋法条約121条3項で定める「人間の居住又は独自の経済的生活を維持すること」ができる海洋地勢ではなく、EEZ及び大陸棚を生成しない。
④ ミスチーフ礁、セカンドトーマス礁及びスビ礁は、いずれも満潮時に海面下に沈む「低潮高地」であり、いかなる海洋権限も有さない。
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