日本が発表した、韓国に対する半導体材料品の輸出管理強化政策(メディアで散見される「輸出規制」は誤った表現)に対抗するかのように、この程韓国側が、日本こそが制裁対象品を北朝鮮に輸出していると、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルが指摘していると言い出した。しかし、この問題以前に、明らかな制裁破りとなる、精製石油製品の違法取引(瀬取り)に韓国船が深く関わっていると、脱北した北朝鮮の元高官が証言している。
7月13日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「脱北高官、北朝鮮は国を挙げて制裁逃れと証言」
脱北した北朝鮮の元高官が、北朝鮮は軍と経済を保持するために必要な石油を確保すべく、多くの地域に国が支援した戦略拠点を構えていると証言した。
朝鮮労働党39号室(注後記)所属の外国為替トレーダー元締めであった李英浩(イー・ヨンホ)氏で、金正恩(キム・ジョンウン)委員長ら幹部のための外貨獲得に当る部隊を率いていた。
しかし、2014年に金委員長が叔父の張成沢(チャン・ソンタク)氏を粛清して間もなく、李氏は家族と共に脱北した。
そして李氏は先週、『VOA』のインタビューに答えて、北朝鮮は国連安保理事会の制裁を逃れるため、瀬取り含めて、禁輸製品確保のためにあらゆる所に国が支援する戦略部隊を配置していると証言した。
具体的には、2017年12月に国連安保理事会採択の制裁No.2397によって、年間50万バレル以上の精製石油の輸入が禁じられ、そのため北朝鮮が必要とする数量が25%以下に抑えられている。
しかし、実際には、2018年では263度の瀬取りによる違法取引で、378万バレル、輸入上限値の7.5倍余りもの精製石油を確保しているという。
この違法取引に関わっているのが、韓国や香港企業が運行するタンカーである。
例えば、韓国船籍タンカー“ルニス”は、2017年から2019年4月までの間、韓国から27航海で合計16万5,400トンもの精製石油製品を運搬している。
そして、そのうち、2018年4月以降の期間では、シンガポール向けに12航海したことになっているが、シンガポール港湾局によれば、同船は2018年4月以降シンガポール港に来ていないという。
そこで、米財務省の調査では、東シナ海海域で北朝鮮タンカーに精精油を横流ししているとみられている。
更に、釜山(プサン)港で昨年10月に差し押さえられた、同じく韓国船籍の“P-パイオニア”も、2017年9月に東シナ海で2度、北朝鮮向けに軽油を違法取引した疑いがある。
李氏によれば、このような瀬取り取引を行うため、北朝鮮は各地に戦略拠点を設けているので、これを取り締るために、韓国政府含めた西側諸国が頻繁に船舶検査を実施すれば、瀬取り等の違法取引はもっと防げるはずだという。
(注)朝鮮労働党39号室:北朝鮮の外貨獲得機関。朝鮮労働党の財政経理部であり、朝鮮労働党中央委員会政務局に所属。麻薬密売、通貨偽造、偽造タバコ密売等の不法活動を指揮する金正恩委員長直属の機関。1974年に金正日総書記が、権力基盤固めに使う外貨を稼ぐ機関として設立。
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