5月下旬に実施された欧州連合(EU)議会選挙では、EU懐疑派と呼ばれるフランス・イタリア・英国の極右政党が第1党となり、ドイツでも議席を伸ばしている。英国のEU離脱が迫っている上に、各国の極右政党の躍進に遭い、EU擁護派の筆頭であるメルケル首相やマクロン大統領によるEUの結束推進が危うくなる状況である。このようなEU分断の動きを最も歓迎しているのがロシアで、極右政党躍進の陰にはプーチン大統領の暗躍があると言われている。その中でも、同大統領からの支援を最も受けているのがイタリアのサルビーニ「同盟(注後記)」書記長と言われる。しかし、「同盟」とロシア与党の「統一ロシア」間の密約に基づき、「同盟」に不正資金が流れた疑いがあるとの報道がなされ、イタリア議会が同書記長に対して、証人喚問を求める動きに出ている。
7月12日付米
『AP通信』:「イタリア議会議員、ロシアとの密約疑惑につきサルビーニ氏の証人喚問要求」
イタリア野党・民主党議員団は7月12日、マッテオ・サルビーニ副首相兼内務相に対して、複数のメディアが報じた、昨年ロシア側との密約で同内務相が率いる中道右派勢力に不正資金が流れたとの嫌疑について、議会にて証言するよう求めた。
昨年3月、同内務相が率いる「同盟」が、ウラジーミル・プーチン大統領が率いる「統一ロシア」と、防衛・安全協力、不法移民の取り締まり、テロとの戦い等で協力することで合意した。...
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7月12日付米
『AP通信』:「イタリア議会議員、ロシアとの密約疑惑につきサルビーニ氏の証人喚問要求」
イタリア野党・民主党議員団は7月12日、マッテオ・サルビーニ副首相兼内務相に対して、複数のメディアが報じた、昨年ロシア側との密約で同内務相が率いる中道右派勢力に不正資金が流れたとの嫌疑について、議会にて証言するよう求めた。
昨年3月、同内務相が率いる「同盟」が、ウラジーミル・プーチン大統領が率いる「統一ロシア」と、防衛・安全協力、不法移民の取り締まり、テロとの戦い等で協力することで合意した。
しかし、イタリアの週刊誌『エスプレッソ』が今年2月、上記協定に関し、モスクワのホテル内で密約が交わされ、中道右派勢力が、EUによる対ロシア経済制裁の解除を推し進める代わりに、数百万ユーロ(数億円)がロシア側から払われる遣り取りがあったとの報道をした。
また、米『バズフィード』オンラインニュースも7月10日、モスクワのホテル内でのイタリア、ロシア双方の関係者の会話の録音テープがあると報道した。
これに対して、サルビーニ内務相は、全く事実無根で、ロシア側からは一銭も、また、ウォッカさえも一滴も受け取っていない、と即座に否定した。
なお、民主党議員は、同内務相に加えて、疑惑報道に携わった『バズフィード』記者、在モスクワのイタリア大使、在ローマのロシア大使、更に、仲介役であった同内務相の関係者であるジャンルーカ・サボイニ氏の証人喚問も要求している。
一方、イタリアの『ANSA通信』は、ミラノ検察庁が、『エスプレッソ』誌報道を契機に、国際汚職容疑の捜査に着手したと報じている。
同日付イタリア『ANSA通信』:「サルビーニ内務相、ロシアからの不正資金疑惑に“ばかげている”と一蹴」
サルビーニ内務相は7月12日、ロシア側との密約で、与党・中道右派勢力に不正資金が流れているとの報道に関し、“根拠のないばかげた話”だとして一蹴した。
『エスプレッソ』誌及び『バズフィード』オンラインニュース報道によると、イタリア及びロシア側関係者間で昨年3月、イタリア向けロシア産原油取引に関し、リベートとして6,500万ユーロ(約79億円)がロシア側からイタリアの中道右派勢力に支払われる密約が結ばれたとする。
上記報道に基づき、ミラノ検察庁が国際汚職容疑について捜査し始めたとの続報に対して、
同内務相は、ロシア側から一銭ももらっていることなどなく、「同盟」の財務諸表をみてもらえば“透明性が担保されている”ことが一目瞭然だと主張している。
(注)同盟:1989年設立のイタリアの政党。書記長はマッテオ・サルビーニ。結党直後は工業地帯が密集し経済的に優越しているイタリア北部の自治拡大を主張する地域政党として知られていた。過激な言動や文化的保守性、反共主義、反移民運動などから極右と認識されることが多いが、政治的目標は労働者の保護と地方分権にあることから、左翼政党という見方もある。しかし、近年は地方主義からイタリア人労働者の職を奪っている外国人移民への排外主義や、欧州圏への批判(EU懐疑主義)に軸を移している。
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