シンガポールの
『TODAY』が報じたところによると、議長国タイのプラユット首相は会議後の記者会見で、「世界第1、第2の経済大国間で貿易摩擦の緊張が高まる中、ASEANはその経済力を生かして世界の中での交渉力を高める必要がある」と語った。首相はまた、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)締結に向けて交渉を加速させるようASEAN各国に促した。「ASEAN地域が将来直面する変化や不安定性に対処するためにRCEPをまとめることが重要だ。特にASEANの重要な貿易相手国の間で広がる貿易摩擦の問題に対処するためにRCEPは不可欠だ。ASEANとして協力して対応することができれば、我々は交渉力を強めることができる。ASEANは6億5千万人の人口を抱え、世界の中で最も大きい経済圏だからだ。」と指摘した。プラユット首相はまた、「ASEANのうち、タイ、インドネシア、シンガポール、ベトナム、の4か国は、G20サミットでも貿易戦争への対応について協議をする」としている。
RCEPの交渉は2012年に始まり、自由貿易圏を創出することを目指していた。RCEPはASEAN10か国に、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドを含めた計16か国から構成され、その経済圏は全世界の人口の45%と、全世界のGDPの3分の1以上を占める。だが中国とインドの間で、市場へのアクセス、及び保護する品目についての議論が続き、交渉が停滞している。
シンガポールのリー首相も、記者団に対してシンガポール経済が今年すでに減速していることを指摘し、ASEANは「米中の貿易戦争からある程度の影響を受けることは避けられない」と語った。首相はさらに、「規模の小さな国々は、大国の行動をコントロールできない。しかし貿易、安全保障、テクノロジーなどの問題に対してASEANは一体となって取り組み、ASEAN全体の利益とすることができる。ASEAN10か国はそれぞれ国の方針も異なり、自国が望む方向性も異なっているため、合意形成は簡単ではない。しかし我々は各国の利益が合致する地点で意見をまとめて、世界に対してASEANとして発言していく必要がある」と語った。
『バンコクポスト』も米中関税戦争への対応が議論の中心となったと伝えている。貿易戦争の問題に加えて、ミャンマーのロヒンギャ問題、南シナ海の問題についても協力して取り組むことも話し合われた。さらに同紙は、ASEANがプラスチックゴミも含めた海洋汚染の問題にも取り組むことで合意したことも伝えている。しかし、米中間の報復関税が世界経済に暗い影を落としている中、この問題への対応が一番の議題となったという。
同紙はプラユット首相の発言として「保護貿易政策が強まっており、ASEANの多国間貿易の枠組みを傷つけている。ASEANは手を取り合ってRCEP交渉に取り組まなければならない。RCEP交渉をまとめることで、貿易摩擦の影響を打ち消すことができる。」と報じた。
またフィリピンのドゥテルテ大統領は「米中の貿易戦争は世界に悪影響を及ぼしている。米中両国は、状況が制御不能な事態に陥る前に、きちんとした議論を行い、双方の見解の差を乗り越えなければならない。」と述べた。
閉じる