ロドリゴ・ドゥテルテ比大統領は、2016年の就任以来、従来方針を大転換して親中政策を推し進めている。それは、欧米が対中批判を繰り広げる、南シナ海領有権問題も同様で、今月初めに南シナ海で発生した、中国船によるフィリピン漁船沈没事件について、“小さな海上事故”だとして、中国側を擁護する発言をした。当然のことながら、反ドゥテルテ派や野党からは、中国に対して弱腰過ぎると猛烈な非難の声が上がっている。
6月17日付米
『AP通信』:「ドゥテルテ大統領、中国船による漁船沈没事故に関し抑制するよう表明」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は6月17日、今月初めに南シナ海で発生した、中国船によるフィリピン漁船沈没事故に関し、“小さな海上事故”であるから大騒ぎをするべきではないと表明した。
6月9日早朝、南シナ海南沙(スプラトリー)諸島東方のリード礁に停泊していたフィリピン漁船が、中国船に衝突されて沈没する事件が発生していた。...
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6月17日付米
『AP通信』:「ドゥテルテ大統領、中国船による漁船沈没事故に関し抑制するよう表明」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は6月17日、今月初めに南シナ海で発生した、中国船によるフィリピン漁船沈没事故に関し、“小さな海上事故”であるから大騒ぎをするべきではないと表明した。
6月9日早朝、南シナ海南沙(スプラトリー)諸島東方のリード礁に停泊していたフィリピン漁船が、中国船に衝突されて沈没する事件が発生していた。
幸い、同船の乗組員22人は、近くを航行中のベトナム漁船に救助された。
ドゥテルテ大統領は、原因を調査するよう指示してはいるが、あくまで事態を穏便に済まそうとしており、同政権の閣僚とは大きな隔たりがみられる。
すなわち、デルフィン・ローレンザーナ国防相は、フィリピン漁船員を救助することなく立ち去った中国船の行為を厳しく非難し、また、外務省も外交ルートを通じて中国側に抗議している。
これに対して、在フィリピン中国大使館は6月14日、中国船がフィリピン漁船員を救助しようとしたが、多くのフィリピン船に囲まれてしまったので危険を回避せざるを得なかったと釈明した。
しかし、フィリピン漁船員は中国側言い分を否定した上で、万一ベトナム船に救助されなければ、沈没船の22人の乗組員は助からなかったと付言した。
なお、ドゥテルテ大統領は日頃から、頭にすぐ血が上り、暴言を吐くことで知られている
が、今回の中国側擁護発言に対して、民族主義者から反ドゥテルテ派にいたるまで、猛烈に非難している。
一方、6月18日付フィリピン『ザ・マニラ・ブルティン』紙:「ドゥテルテ大統領、長い沈黙を破って、漁船沈没は“小さな海上事故”だと発言」
ドゥテルテ大統領は6月17日晩、漁船沈没事故から8日間も沈黙していたが、当該事故は“小さな海上事故”だと発言して物議を醸している。
マニラ南西部のカビテ州で行われた、フィリピン海軍創立121年記念式典に出席して発言したのもので、同大統領は、中国船の暴挙に抗議するため海軍を出動させるべきとの要請を却下した上で、大ごとにしないように意図してそのように発言したものとみられる。
同大統領としては、大国の中国に対抗しても、力のないフィリピンが打ち負かされるのは必然であるとして、無用な衝突は避けるべきだと考えている。
ただ、弱腰批判に備えて、事態の原因究明を指示し、その上で次の対応策を検討するとも付言している。
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