ブラジル警察は21日、汚職容疑でミシェル・テメル前大統領を逮捕した。リオデジャネイロの連邦検察当局の発表によれば、犯罪組織の主導者として、原子力発電所の建設に絡む収賄などの疑いにより、身柄を拘束されたという。
『ロイター通信』『AFP通信』などのメディアの報道によると、テメル前大統領はサンパウロで逮捕された。テメル氏は78歳。中道右派の民主運動党出身の政治家で、ルセフ政権時に副大統領となり、2016~18年に大統領を務めた。ブラジルの歴代大統領で最低の支持率を記録した不人気の大統領であり、多くの汚職事件について嫌疑をかけられたものの、議会下院の採決によって起訴を免れ、昨年末に任期を満了して退任している。
テメル氏の他にも、「洗車」作戦と呼ばれる汚職捜査により、既に数十人の政治家や企業の上層部が逮捕されている。身柄を拘束された政治家には、モレイラ・フランコ前鉱業・エネルギー相なども含まれており、同相は企業幹部らを含む6人とともに逮捕された。
テメル氏の前の大統領も、汚職事件で身柄を拘束されるなどしている。労働者党出身のルイス・イナシオ・ルラ元大統領は、2件の汚職事件で有罪判決を受けて収監され、1年以上に及ぶ長い拘禁生活を送っている。テメル氏の前任者であり、ブラジル史上初めての女性大統領となった労働者党出身のジルマ・ルセフ大統領も、やはり汚職問題によって国民の批判が高まり、2016年に議会上院の弾劾によって職務停止となった。
テメル氏の後任となった極右のジャイル・ボウソナロ現大統領は、汚職や犯罪に対して厳しい姿勢で臨むとの公約を掲げ、昨年10月の大統領選で当選したが、「洗車」作戦の進行が当選に寄与したとされている。
同作戦は2014年に始まり、石油会社ペトロブラスや大手建設会社、複数政党の政治家が絡む、世界最大とも言われる巨大な贈収賄の構造の実態を明らかにしてきた。汚職は石油業界から始まり、他業界や公共事業へと広がりを見せており、多くの政治家や企業幹部が逮捕されるなどして一掃され、ブラジルの政財界の様相が一変する事態となっている。
ボウソナロ大統領は、チリへの訪問の途中でテメル氏の逮捕についてコメントし、「全ての人が自身の行動に対し対応なければならない。」として、今回の逮捕は、自らが終止符を打つとして公約に掲げた、長きにわたる腐敗した政治慣行の結果であると指摘した。
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