セルビアの首都ベオグラードで17日、ブチッチ政権の強権体質とメディアへの言論抑圧に抗議する大規模な反政府デモが行われ、数千人が大統領官邸を取り囲み、数時間にわたって実質的に官邸の建物を封鎖した。
『AFP通信』『ロイター通信』『ブルームバーグ』などによれば、セルビアでは、アレクサンダル・ブチッチ大統領が、独裁的な傾向を強めているとの批判が強まり、昨年12月以降、毎週末に反政府デモが起きている。反政府側は、大統領と与党セルビア進歩党(SNS)に対し、メディアの言論の自由と、公正で自由な選挙を求めているが、17日のデモで政府への対決姿勢を改めて示した。デモは国内の他の数十都市にも拡大している。
前日16日の夜には、デモ隊が政府系のセルビア国営放送(RTS)の建物に乱入し、偏向のない報道を求め、与党への迎合を批判した。その中にはベオグラードのドラガン・ジラス元市長や、右派政党「セルビアの生活のための運動(Dveri)」のボシュコ・オブラドビッチ党首なども含まれており、野党の指導者らが反政府デモでの存在感を増している。
17日のデモは、実質的に大統領官邸のビルを数時間封鎖することとなった。警察は催涙スプレーなどを使用し、デモ隊が官邸近くに大きなスピーカーのあるトラックを持ち込むのを阻止しようとしたができなかった。デモ隊はその後、官邸から警察本部に向かい、拘束された10人の反対派の釈放を要求した。警察は拘束されたのは6人だけと説明している。デモ隊と警察は約2時間にわたりにらみ合いを続けたが、事件などは起きなかった。
デモのリーダーの1人は、「アレクサンダル・ブチッチ、あなたは18日午後3時まで、拘束された人々を解放する時間がある。それが行われなければ、我々は新たなデモの実行を決定し、最後まで継続する。」と大統領の辞任を求め、最後通告を行っている。
ブチッチ大統領は官邸で記者会見し、デモ隊を「フーリガン」と呼び、自分が彼らの要求に怖気づくことはないと応じない姿勢を強調した。会見の模様はRTSで生中継されている。大統領はまた、オブラドビッチ氏を「ファシスト」、ジラス氏を「寡頭政治の支配者」だと厳しく批判し、自らに対する独裁的であるとの非難は当たらないと退けた。
セルビアは、2025年に欧州連合(EU)に加盟することを目指しているが、昨年欧州委員会から、ジャーナリストらへの脅迫や暴力があるとして、表現の自由をめぐり批判を受けてきた。
閉じる