米主要大学の研究チームが先週公表した研究結果によると、トランプ大統領の貿易戦争によって米経済が2018年に受けた損失は、78億ドル(約8700億円)にも上ることが判明した。
『ロイター通信』や経済紙などが17日までに報じた研究論文は、「保護主義への回帰」と題されている。エール大、コロンビア大、カリフォルニア大ロサンゼルス校、同バークレー校の経済学者らのチームによるものであり、全米経済研究所が発表した。
論文の執筆者らは、トランプ大統領の各種政策の短期的な影響を分析し、貿易戦争の標的となった国々からの輸入が31.5%減少し、報復措置を受けた米国の輸出も11%減少したと見積もった。...
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『ロイター通信』や経済紙などが17日までに報じた研究論文は、「保護主義への回帰」と題されている。エール大、コロンビア大、カリフォルニア大ロサンゼルス校、同バークレー校の経済学者らのチームによるものであり、全米経済研究所が発表した。
論文の執筆者らは、トランプ大統領の各種政策の短期的な影響を分析し、貿易戦争の標的となった国々からの輸入が31.5%減少し、報復措置を受けた米国の輸出も11%減少したと見積もった。また、輸入品の価格の上昇によって、消費者や生産者が被った年間の損失額は、合計688億ドル(約7兆6750億円)に達したとされている。
論文は、「関税収入の拡大や、価格の上昇による国内生産者の利益を勘案し、損失額合計は78億ドルとなった。」と試算した。これは国内総生産(GDP)の0.04%に相当し、米経済全体から見れば小さな金額だが、「消費者は関税の負担に耐えている。」と指摘した。
自らを「タリフ(関税)マン」と称するトランプ大統領は、2016年の大統領選中も、大統領に就任してからも、不公正な貿易による輸入品を締め出し、自由貿易協定の再交渉を行うことによって、貿易赤字を削減することを公約に掲げてきた。トランプ氏は、米国の製造業を守るために保護主義的な貿易政策を追求しており、中国、欧州連合(EU)他の主要貿易相手国と報復関税の応酬を続けるなどして、貿易摩擦が激化している。
論文の執筆者らは、米国の関税は、主に共和党が政治的に重要とする地域の産業を保護するためにかけられたものだが、貿易相手国からの米産品に対する報復関税が、これらの地域が受けた利益を相殺してしまったと説明している。
論文は、「共和党が非常に優勢な郡の貿易産業の労働者が、最も貿易戦争の負の影響を受けていることが判明した。」としており、2016年の大統領選で、トランプ氏が85~95%と圧倒的得票をした約30郡での影響が最も大きく、トランプ氏の得票率が35%程度だった民主党優位の郡と比較すると、損失額が58%も大きくなったという。
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