米朝首脳会談で成果は得られなかったものの、マイク・ポンペオ米国務長官は、ベトナムからフィリピンを訪問し、親中派のロドリゴ・ドゥテルテ大統領を牽制した。すなわち、南シナ海における中国の一方的な海洋進出を食い止めるためには、フィリピンを米国から遠ざけないことが肝要だと考えてのこととみられる。
2月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『AP通信』配信):「ポンペオ国務長官、中国による航行の自由妨害を憂慮」
マイク・ポンペオ国務長官は2月28日、米朝首脳会談が開かれたハノイ(ベトナム)から急きょフィリピンを訪問した。
同日夕方、同国務長官は早速ロドリゴ・ドゥテルテ大統領と会談し、中国が南シナ海に一方的に進出し、同海域における航行の自由を脅かす恐れがあるとの懸念を伝えた。...
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2月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『AP通信』配信):「ポンペオ国務長官、中国による航行の自由妨害を憂慮」
マイク・ポンペオ国務長官は2月28日、米朝首脳会談が開かれたハノイ(ベトナム)から急きょフィリピンを訪問した。
同日夕方、同国務長官は早速ロドリゴ・ドゥテルテ大統領と会談し、中国が南シナ海に一方的に進出し、同海域における航行の自由を脅かす恐れがあるとの懸念を伝えた。
在ワシントンのホセ・ロムアルデス比大使は、電話インタビューに答えて、ポンペオ長官とフィリピン政府間では、1951年締結の相互防衛条約(注後記)の見直しについても協議されるとした。
フィリピン側はかつて、南シナ海において万が一フィリピン軍等が襲撃された場合、米軍が援助部隊を派遣してくれるのかどうか、同条約の適用条件を再確認したいと申し入れていた。
同条約についてポンペオ長官自身も、本条約は米比両国にとって長期にわたる密接な関係を表すものなので、ドゥテルテ大統領及びテオドロ・ロクシン外相としっかり協議していくと語っていた。
なお、同長官のロバート・パラディーノ副報道官は、同長官はドゥテルテ大統領と米比同盟関係につき再確認した上で、同地域での安全保障上の協力関係改善及びテロ対策について協議したとコメントした。
3月1日付フィリピン『マニラ・ブルティン』紙:「米比友好及び同盟関係を再確認」
ドゥテルテ大統領は2月28日晩、ベトナムからフィリピンを訪問してきたポンペオ長官と会談し、米比間友好及び同盟関係を再確認した。
在マニラの米大使館高官も、同長官と同大統領との協議は、両国関係を強化する上で有意義であったとツイートしている。
親中路線を取ってきたドゥテルテ大統領は最近になって、米国との関係見直し、強化の姿勢を表明していた。
大統領府のサルバドル・パネロ報道官(兼首席法律顧問)は、会談直前に、同大統領がフィリピン周辺の安全保障問題やテロ対策について同長官と協議する意向を示していると明かした。
なお、ドナルド・トランプ大統領はかつて、特にドゥテルテ大統領の麻薬犯罪撲滅政策を評価するとしていて、同大統領を米国に招待するとも発言している。
ただ、ドゥテルテ大統領の訪米時期は依然未定の状態である。
(注)相互防衛条約:1951年8月 にワシントンで調印された米国とフィリピンとの間の相互防衛条約。52年8月発効。条約の趣旨は、武力攻撃を受けた場合、自国の憲法上の手続に従って共同行動をとること。その適用範囲は、フィリピン、米国の領土および両国管理下の地域、軍隊、船舶、航空機で、非常に広い。有効期間は無期限だが、いずれか一方の他方に対する通告後1年でこの条約を終了させることができる。
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