1月20日付
『AP通信』:「中国の景気減退、労働者と消費に打撃」
中国はこれまで、低賃金の生産工場の国から繁栄した消費の国へ転換すべく、大都市の労働者や起業家を支援する政策を実施しようとしてきた。
しかし、経済成長率の鈍化に伴い、このような労働者や起業家に悪影響が出始めてきている。
中国の2019年の成長率は、6%以上と見込まれ、2018年の6.5%よりわずかに下がるとは言え、世界平均に比べて依然高い。
ただ、その経済成長率見込みは政府による大幅支出によるところが大きく、その他産業界の伸び率はすこぶる低いのが実態である。
実際、米国との間で繰り広げられている関税賦課合戦の影響で、徐々にではあるが、乗用車販売減少、不動産市場低迷、更には消費減退に伴う失業率上昇が出始めている。
確かに、2007年に14%もの経済成長率を達成した中国は、物価、株価等加熱し過ぎた市場を抑えるため、抑制政策を取らざるを得なかったが、景気減速が政府の予想以上に大きかったと言える。
すなわち、習近平(シー・チンピン)指導部は2013年、新たな雇用や事業を生みだす起業家を支援すると約束したものの、実際には石油、金融、製造業等を営む国営企業の拡大に重きを置いた。
更に、北京、上海等大都市の地方政府が、2017年より不法滞在している地方労働者を出身地に追い返す政策を取り始めたことから、かかる地方出身労働者を低賃金で雇っていた中小企業や、また、彼らを見込んで商売をしていたレストラン、小売業、そしてアパート賃貸業者等がもろにその影響を受けることになった。
なお、経済評論家の中には、政府の景気刺激策によって今年の経済成長率は持ち直すと見る向きもいるが、中小企業の経営者等は、更に景気後退すると懸念する声が多い。
一方、1月19日付『ニューヨーク・ポスト』紙意見欄:「中国経済を破滅させるのは共産主義」
中国国家統計局は依然、中国経済は6.5%前後の成長率を維持しているとする。
しかし、中国の事業主等はこの数値を一切信じてはいない。
何故なら、現実問題として、製造業、小売業、乗用車販売、不動産等あらゆる業界で景気後退が起こっているからである。
更に彼らは、この景気後退は、ドナルド・トランプ大統領が仕掛けた米中貿易紛争ではなく、共産党政権の政策によるところが大きいと信じている。
習国家主席は昨年12月、「改革開放政策」施行40周年記念式典で、これまで同様、個人事業主等を支援し、個人資産も保護することを約束すると繰り返し述べた。
しかし、実際に習指導部が実施してきているのは、国営企業への無限の信用供与であり、一方、最も必要とされる個人事業主の信用供与はほとんど無視されている。
また、習国家主席の政権内の権力が強くなり過ぎたことも、経済成長に悪影響を与えていると言える。
すなわち、同主席の方針の下、中国国内の50人以上の従業員を抱える会社は全て、共産党の支部を設けることが義務付けられ、更に、ほとんど全ての会社は、共産党員を取締役として迎える必要がある。
かかる環境下、個人事業主や会社経営者が、事業展開のための自由な発想・決定ができる訳はなかろう。
何故なら、各社に派遣された共産党員は強欲で、超法規的な税の取り立てに躍起となり、また、国営金融機関から当該会社にとって不利な(つまり高利の)資金手当てを迫るのが常だからである。
そこで、中国経済を真に心配する経済学者は、今こそ“改革開放政策”や“五ヵ年計画”の名に隠れた「計画経済」(注後記)に見切りをつけ、真の市場経済に移行すべきときだと力説している。
(注)計画経済:経済の資源配分を市場の価格調整メカニズムに任せるのではなく、国家の物財バランスに基づいた計画によって配分される体制。対立概念は市場経済。
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