ブラジルのジャイル・ボウソナロ大統領は15日、現在の銃規制法による銃の所有条件を緩和する大統領令に署名した。暴力犯罪が蔓延する同国の治安をさらに悪化させるという懸念もある中で、今年初めに就任したばかりの同大統領は、公約の実行に向け始動した。
『AFP通信』『AP通信』『ロイター通信』『ニューヨーク・タイムズ』など、多数のメディアが報じた。15日の閣議後に署名の場面がテレビで生中継され、ボウソナロ氏は、「良き市民」に「正当な自衛の権利を保証するため」、武器を持つ条件を緩和すると説明した。
本大統領令によって、これまでのように銃の必要性の証明や警察の承認などが不要となり、農村部や人口10万人あたりの殺人事件の発生率が10件を超えた都市部の住人などで、25歳以上で犯罪歴が無いなどの一定の条件を満たせば、銃を基本的に4丁まで購入し、自宅や職場に保管しておくことが可能となった。但し、公然と武器を携帯することは許されず、それは従来通り、警察や官民の保安要員、軍隊などに限られる。
ブラジルでは2017年、過去最高の約6万4,000件の殺人事件が発生し、戦闘地域を除き、世界で最も危険な国の1つとなっている。その内の約4万5,000件が銃器によるものだ。ブラジルの人口10万人あたりの殺人事件発生率は30.8件で、国連が暴力犯罪の多発地域と定義する水準の3倍に上る。銃乱射事件が度々報道される米国の発生率は、10万人あたり約5件、それよりずっと多いメキシコでも25件だ。
ボウソナロ氏は、昨年10月の大統領選で、犯罪と汚職の取り締まりなどを公約に掲げた。その訴えに多くの国民が共鳴し、ボウソナロ氏は選挙戦に勝利、今年初めに大統領に就任している。
ボウソナロ氏は、一般市民に銃器の購入を実質禁止した2003年の法律を覆したいと主張してきた。元軍人で極右の同氏は、大統領選の選挙運動で、長い議員生活の間の自らの主張を、しばしば親指と人差し指で銃の形を作るジェスチャーで示していた。
ボウソナロ大統領は、銃販売の全面的禁止の是非を問う2005年の国民投票で、ブラジル国民の64%が禁止に反対したことにより、今回署名した大統領令については支持されるとしているが、昨年12月に実施された世論調査によると、61%の国民が銃規制法の緩和に反対だった。国民の間に緩和がさらに治安の悪化に繋がるという懸念がある中、同大統領は、公約実現に向けた第一歩を踏み出した。
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