2016年に発生した、在トルコ・ロシア大使暗殺事件に関し、この程トルコ当局は、エルドアン大統領の仇敵であるイスラム市民運動指導者のギュレン尊師(注後記)を首謀者としたテロ事件だったとして、同尊師を含め合計28人の容疑者を訴追した。起訴状によると、トルコ・ロシア間関係悪化を企てたものと断定しているが、同大統領の恣意的な背景があるのではとの見方もできる。何故なら、かつての同大統領支持者だった米国在住の同尊師が、二度もクーデター事件に関与した疑いがあることもあって、今回の事件を契機に、同尊師及びその支持者たちを徹底的に痛めつけようとしているとみられるからである。
1月8日付
『AFP通信』:「2016年に発生した在トルコ・ロシア大使暗殺事件の公判が開廷」
在トルコ・ロシア大使であったアンドレー・カーロフ氏(享年62歳)は、2016年12月にアンカラ(トルコ首都)で開催された写真展会場で、非番だったトルコ警察官のメブルット・マート・アルティンタス容疑者(22歳)に射殺された。
同容疑者はその場でトルコ特殊部隊によって射殺された。...
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1月8日付
『AFP通信』:「2016年に発生した在トルコ・ロシア大使暗殺事件の公判が開廷」
在トルコ・ロシア大使であったアンドレー・カーロフ氏(享年62歳)は、2016年12月にアンカラ(トルコ首都)で開催された写真展会場で、非番だったトルコ警察官のメブルット・マート・アルティンタス容疑者(22歳)に射殺された。
同容疑者はその場でトルコ特殊部隊によって射殺された。
トルコ検察は、当事件について、トルコとロシアとの関係悪化を狙ったテロ事件と断定し、“計画的殺人”に関わったとして16人を、また、“当該テロ組織のメンバー”で同事件を支援したとして12人を訴追した。
被告人のうち13人がトルコ国外にいるため、欠席裁判となるが、その中には米国在住のイスラム指導者のフェットフッラー・ギュレン尊師が含まれている。
同尊師は、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の仇敵であり、トルコ当局からは、2016年7月に発生したクーデター未遂事件の首謀者として指名手配されている。
同尊師は、クーデター未遂事件はもとより、今回のロシア大使暗殺事件も一切関与していないと述べている。
しかし、トルコ当局は、同尊師率いる“ギュレン運動、または、フェットフッラー集団”をテロリスト・グループと認定している。
なお、同尊師の他に米国在住で訴追されているのは、ザリフ・アリ・テカラン氏(66歳)で、同氏は現在、テキサス州のノース・アメリカン大学(2007年創立の、非営利組織の私立大学)の総長を務めている。
一方、2016年クーデター未遂事件発生を契機とした取締りの厳格化後、トルコ当局によって数万人の市民が“ギュレン運動”に関わったとして逮捕されている。
(注)ギュレン尊師:フェットフッラー・ギュレン氏(77歳)はトルコの学者で、イスラム道徳をベースとした市民運動の指導者。その支持者たちの活動は“ギュレン運動”とも呼ばれる。かつて、エルドアン大統領の支持母体であったが、2013年末、同政権の大規模汚職事件を追求するための反政府運動を起こし、また、2016年7月には、クーデター未遂事件を策謀したことから、同大統領の仇敵とされている。
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