米中貿易紛争は、12月初の米中首脳会談で一時休戦が合意されたものの、トランプ大統領が簡単に応諾する意向がないため、容易に問題解決とはいかないとみられる。そうした中、米ボーイングが2015年に中国に初進出した現地工場で生産された同社機材の一番機が、地元航空会社に初めて引き渡された。同社としては、いずれは世界最大の航空機市場となる中国への足掛かりとするための進出であるが、トランプ大統領が米メーカーによる米国外への生産拠点移転に目くじらを立てており、いばらの道は続きそうである。
12月15日付米
『CNNニュース』:「米ボーイング、中国現地工場生産の一番機を引き渡し」
米ボーイング(BA)は12月15日、中国東端の浙江省舟山(チョウシャン)に設けた現地製造工場で生産された小型ジェット機737の一番機を、地元最大の中国国際航空(エアチャイナ、1988年設立の国営企業)に引き渡した。
同工場はBAと中国商用飛機有限公司(COMAC、注後記)との合弁会社として2015年に設立された。...
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12月15日付米
『CNNニュース』:「米ボーイング、中国現地工場生産の一番機を引き渡し」
米ボーイング(BA)は12月15日、中国東端の浙江省舟山(チョウシャン)に設けた現地製造工場で生産された小型ジェット機737の一番機を、地元最大の中国国際航空(エアチャイナ、1988年設立の国営企業)に引き渡した。
同工場はBAと中国商用飛機有限公司(COMAC、注後記)との合弁会社として2015年に設立された。
COMACの趙閲朗(チョウ・ユエルァン)社長は、BAにとって中国市場への大きな足掛かりとなるだけでなく、中国航空機業界において米中共同事業の第一歩となるとコメントした。
確かに、BAにとって世界的なライバルである欧州エアバスに対抗するため、中国における基盤創りの大きな意味となる。
BA中国のジョン・ブランズ社長も『ロイター通信』のインタビューに答えて、中国という巨大市場への大きな挑戦となると語った。
また、同社長は、トランプ大統領が米企業の海外への生産拠点移転に批判的なことに対して、いずれ世界最大の航空機市場となる中国での基盤固めができれば、結果として米国内での航空機製造需要が高まり、雇用確保にも繋がると付言した。
なお、国際航空運航協会(IATA、世界の航空会社で構成される業界団体、1945年設立)によれば、中国の航空機市場は、2022年までに世界最大の米国を抜き去るとみている。
BAの試算でも、今後20年で中国は7,680機、金額にして1兆2千億ドル(約135兆6千億円)の需要があり、更に、部品供給、メインテナンス等周辺のサービス事業として1兆5千億ドル(約169兆5千億円)が見込まれるとしている。
同日付中国『環球時報』:「ボーイング中国工場生産の一番機引き渡し」
BAとCOMACの合弁会社の舟山工場で生産された一番機737 Maxが、12月15日にお披露目されてエアチャイナに引き渡された。
737 Maxは、米レントン工場(ワシントン州)で機体製造・組み立てがなされた後、舟山工場で内装、塗装、顧客用装備が施されたものである。
ボーイング・インターナショナルのマーク・アレン社長は、同社にとって737型機の米国外での初生産となるが、中国の地元政府等の支援の下で、巨大市場への大きな足掛かりが築けたと語った。
BAは2019年において、同舟山工場で同小型ジェット機を100機生産する計画である。
なお、業界専門家は、米中貿易紛争の90日間の一時休戦が合意されて以降初めての米中共同事業の具体例であるが、今回のボーイング機の中国現地生産にみられるとおり、米中の貿易関係は相互依存で成り立っていることを如実に表しているとコメントした。
例えば、ボーイングだけをみても、世界中を飛んでいる同社の1万機以上の航空機の部品等に中国製品が使われている。また、同社の737、747、767、777型機、更には最新鋭の787型機の製造にも中国企業が参画している。
(注)COMAC:複数の航空会社の民間航空機生産部門を再編して2008年5月に上海で設立された、半官半民の航空機製造会社。最終的に、ボーイングやエアバスへの依存を減らす為に、150席以上の大型旅客機の設計と生産を専門にしている。
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