政府は今月初め、次期中期防衛力整備計画(2019~2023年度)の概要を明らかにした。
それによると、北朝鮮及び中国の脅威に備えるため、政府は地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」など米国からの高額装備導入を進める計画であり、5年間の防衛予算額として27兆円を検討しているという。
これは、前中期(2014~2018年)実績の24兆7千億円より+9%増額を意味する。...
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政府は今月初め、次期中期防衛力整備計画(2019~2023年度)の概要を明らかにした。
それによると、北朝鮮及び中国の脅威に備えるため、政府は地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」など米国からの高額装備導入を進める計画であり、5年間の防衛予算額として27兆円を検討しているという。
これは、前中期(2014~2018年)実績の24兆7千億円より+9%増額を意味する。
海外メディアの多くはこの点に注目し、安倍晋三政権下での防衛力強化方針を盛んに報道している。
ただ、この背景にあるのは、ドナルド・トランプ政権からの日米貿易不均衡是正への圧力である。
上記に述べた「イージス・アショア」はもとより、高価なF-35ステルス戦闘機の大量買い付け等、経済摩擦の一環での米国製防衛装備品の輸入増大にある。
しかし、米国などの軍事専門家は、上記に対抗するように開発が進められている、日本独自の最新技術に注目している。
それは、世界で初めてリチウムイオン電池を搭載した最新鋭潜水艦“おうりゅう”である。
2005年から、三菱重工と川崎重工が共同製造している“そうりゅう型”潜水艦の11番艦で、今年10月初に進水式が行われ、2020年に就役予定である。
米技術専門ニュース『ビジネス・インサイダー』によれば、リチウムイオン電池搭載によって、従来の鉛蓄電池搭載型に比べて、約2倍の電力を蓄えられることから、航続距離も連続潜航時間も大幅延長が可能になったとする。
そもそも、専守防衛の日本では、理論的に半永久潜航が可能な原子力潜水艦は必要ではなく、それより敵に発見されにくい“静粛性”に富む通常動力型が唯一の主力潜水艦となっている。
米ニュース・サイト『ザ・ナショナル・インタレスト』も、価格的にも原子力潜水艦の1/4~1/6であることから、非常に評価が高いとする。
更に、同ニュース・サイトは、リチウムイオン電池搭載のスマートフォンなどで発火・爆発事故が度々発生していることから、日本は多額の費用をかけて、安全かつ信頼性の高い潜水艦用リチウムイオン電池の開発を達成し、更に、強靱な隔壁をも備えることで、より安全性の高い最新鋭潜水艦を製造したとコメントしている。
一方、『ビジネス・インサイダー』は、日本は、尖閣諸島周辺での中国潜水艦の行動に神経を尖らせるだけでなく、中国による南シナ海~インド洋への海洋進出にも対抗する必要性から、結果として潜水艦戦力の拡大と性能向上を遂げたとしている。
同ニュースは更に、トランプ政権の圧力で米国製武器の輸入が大幅に増え、日本の国内防衛産業が窮地に陥っている現状を踏まえ、潜水艦技術は日本の重工業の最後の砦だと考えられる、とも強調している。
なお、“そうりゅう型”潜水艦の12番艦(名前は未定)も、2019年に進水式を迎え、2021年就役となる予定である。
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