既報どおり、12月1日にアルゼンチンで開かれた米中首脳会談の結果、ひとまず貿易戦争(関税掛け合い合戦)は一時休戦で落ち着いた。しかし、トランプ政権は、90日の猶予期間に一定の成果が上がらねば、かつて宣言どおり、大半の中国製品への追加関税賦課措置を講ずる意向に変わりない。そこで中国側としては、この90日間に少しでも実のある交渉を進めるべく、実貿易高をコントロールすべく国有企業にはたらきかけている模様である。
12月8日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「中国、米国との通商交渉前の11月輸出高の伸びが鈍化」
中国関税総局が12月8日に公表した11月データによると、輸出高の伸びが前年同月比+5.4%(輸出高2,274億ドル、約25兆6,500億円)と、10月の前年同月比+12.6%より鈍化している。
これは、世界的需要の鈍化に加えて、今後進められる米中通商交渉に向けての米国側圧力によるものとみられる。...
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12月8日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「中国、米国との通商交渉前の11月輸出高の伸びが鈍化」
中国関税総局が12月8日に公表した11月データによると、輸出高の伸びが前年同月比+5.4%(輸出高2,274億ドル、約25兆6,500億円)と、10月の前年同月比+12.6%より鈍化している。
これは、世界的需要の鈍化に加えて、今後進められる米中通商交渉に向けての米国側圧力によるものとみられる。
一方、輸入高の伸びは僅か+3%(輸入高1,827億ドル、約20兆6,100億円)と、10月時の前年同月比+20.3%より激減している。
これらから考えられることは、習政権が、先端技術の取扱いや知的財産権侵害が主要議題となる米中通商交渉への周到な準備に取り掛かっていく過程で、中国経済の低成長が深刻になっている兆しとも捉えられることである。
ただ、米国向けの輸出高の伸びは前年同月比+12.9%(輸出高462億ドル、約5兆2,100億円)と堅調であり、これは、米政権による追加関税適用前の駆け込み需要のためとみられる。
一方、米国からの輸入高の伸びは前年同月比+5%(輸入高107億ドル、約1兆2,100億円)と、10月時の前年同月比+8.5%よりわずかに減少している。これは、12月1日の米中首脳会談に備えて、米国産品の輸入高増額の圧力に際して、直近の輸入高を抑えることによって伸び率をより大きく見せるための戦法とも覗える。
しかし、皮肉にも、この結果11月の対米貿易黒字は355億ドル(約4兆円)と過去最高になっている。
なお、これまでの米中間の関税賦課、報復関税賦課の貿易紛争は、以下のとおり緊張度が増してきている。
(米国側)今年7月、中国側の知的財産窃取等への制裁として、中国製品(車・ロボット・半導体等)合計500億ドル(約5兆6,400億円)への25%関税賦課通告。
(中国側)上記措置に対抗して、即日、米国産品(農産品・車・鉄鋼製品等)合計500億ドルへの25%報復関税通告。
(米国側)今年9月、中国製品(家電・家具等)合計2,000億ドル(約22兆5,600億円)に10%の関税賦課通告。
(中国側)上記措置に対抗して、即日、米国産品(天然ガス・中型航空機等)に5~25%の報復関税賦課通告。
(米国側)上記に対抗して、先の中国製品合計2,000億ドルに関わる関税率を、来年1月以降25%に引き上げ通告(*)
(*)トランプ大統領は、12月1日米中首脳会談の結果を踏まえて、この25%関税率適用を90日間猶予することを承諾。
一方、欧米諸国は、中国政府が2015年に発表した「メイド・イン・チャイナ 2025計画(注後記)」に伴い、特に西側諸国の先端技術を窃取したりして、安全保障にも影響のある情報通信等の分野に殴り込みをかけてくることを非常に懸念している。
(注)メイド・イン・チャイナ 2025計画:10年後の2025年までに、次世代通信・先端ロボット・宇宙分野等において中国製造品を世界で競争できるレベルまでに引き上げ、建国100周年の2049年までに、それを世界最強国として君臨できるレベルにするとの計画。
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