米フェイスブックは、シンガポール政府当局が「偽りで悪意がある」とみなすネット上の記事について投稿の削除を求められたが、これを拒否したことが明らかになった。同国法務省は9日、この動きを受けてフェイスブックの対応を批判し、偽ニュースを防止するための法律の制定が必要であるとの見解を示した。
同記事は、オーストラリアを拠点として活動するシンガポール人ブロガーで政治活動家のアレックス・タン氏によるもので、シンガポールの銀行と、マレーシアのナジブ前首相の汚職疑惑に関連し、国際捜査の渦中にある政府系ファンド「1MDB」について書かれており、シンガポールを次の捜査の標的としている。シンガポールの中央銀行である金融管理局(MAS)は9日、記事は根拠なく中傷的だとして、警察に届け出たことを発表した。
同記事はタン氏が創設し、運営するウェブサイト「ステーツ・タイムズ・レビュー(STR)」上で公開された。同サイトには、シンガポールの指導者や与党の人民行動党に関する批判的な記事が掲載されていた。
これに対し、シンガポールの規制当局である情報通信メディア開発庁(IMDA)の指示に基づき、インターネットのプロバイダーが、同記事をアクセス不能とした。IMDAは声明で、「記事はシンガポール政府に対する市民の信頼を損ない、公共の利益に反するものと評価した。」として、STRが禁じられた内容の記事を掲載したとの判断を示した。
但し、STRの記事は、フェイスブック上ではまだ参照可能だ。IMDAはそこで同社に対し、記事の投稿を削除するよう要請したが、「フェイスブックがIMDAの要請には従わない意向である。」と10日の別の声明で説明している。
シンガポール議会は、法律の制定を含む偽ニュースの脅威への対策について議論を行ってきた。法務省は、「フェイスブックは、明らかに誤りで名誉を棄損し、虚言を使ってシンガポールを攻撃する投稿の削除を拒否した。」と述べ、偽ニュースと戦うための法律制定の必要性が証明されたと指摘した。また、「虚言を排除し、シンガポールを偽情報拡散の攻撃から守るために、フェイスブックに頼ることはできない。」と同社を批判した。
タン氏は9日、フェイスブックへの投稿で、シンガポール人に発信する手段を失ったため、サイト上での活動を停止することを明らかにした。また、フェイスブックの個人ページも2週間で閉じるとしたが、シンガポール政府からの圧力が原因ではないと語った。
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