トランプ米大統領は、30日に内容の一部が公開された米ニュースサイト「アクシオス(Axios)」のインタビューで、米国内で生まれた子に対し自動的に米国籍の付与を保証する「出生地主義」の現行制度を廃止する意向を表明した。
『AFP通信』や
『ロイター通信』など多くの欧米メディアが報じた。中間選挙を来週に控え、中南米などからの移民を断つ立場をさらに明確化した形だが、大統領が憲法で保障される制度に対し介入できるかについては疑問がある。これに先立ちトランプ政権は、中米ホンジュラスなどから徒歩で米国を目指す移民隊に対し、メキシコ国境に5,000人以上の軍隊派遣を決定したが、「出生地主義」の廃止は、それよりさらに論議を呼びそうだ。
米国内で生まれた全ての人が同国の市民権(国籍)を得る権利は、合衆国憲法修正第14条に定められている。憲法改正には、米連邦議会の3分の2以上の賛成が必要だが、現在の議会の与野党伯仲状況に鑑みると、その実現はほぼ不可能と考えられる。
しかしながら、トランプ大統領はアクシオスに対し、大統領令を出せば現行制度の廃止は可能であると語っている。「憲法改正が必要だと常々聞かされてきたが、実際はそうではない。大統領令だけでそれが可能と言われている。」とインタビューで説明した。
トランプ大統領は、米国は「出生地主義」により市民権を付与している唯一の国と誤った情報を伝え、現行制度を強く批判した。大統領は、「ある人が入国して子供が生まれれば、その子は85年間米国民としての恩恵を受けられる。そんな国はわが国だけだ。ばかげた制度であり、終わらせるべきだ。」と持論を語った。
実際、親の国籍継承を重視する「血統主義」を採用する日本などの世界の殆どの国では、国内で生まれた子に自動的に国籍付与を保証していない。一方で、親が市民権を持たないあるいは不法移民であっても、国内で生まれた子供に国籍を与える「出生地主義」を採用する国も20カ国以上に上っている。
トランプ大統領は、「出生地主義」の廃止の方針について、顧問弁護士と相談済みとしており、「それは進行中だ。大統領令により実現するだろう。」と、既に制度変更の手続を進めていることを明かした。大統領は実施時期などについては明言しなかったが、今回の表明によって、今後激しい法的議論が展開されることになると思われる。
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