米連邦最高裁判事候補のブレット・カバノー連邦控訴審判事(53歳)の承認について、三十有余年前の同候補の高校時代の素行まで問題視されて、米国のみならず国際社会にも大きく注目された。
10月初め、連邦捜査局(FBI)の捜査結果も踏まえて、結局上院議会で承認され、同判事は目出度く最高裁判事に就任することとなった。
米国ではこのように、大統領が推薦した最高裁判事候補者を議会が承認するという手続きがとられ、国民の関心も非常に高い。...
全部読む
米連邦最高裁判事候補のブレット・カバノー連邦控訴審判事(53歳)の承認について、三十有余年前の同候補の高校時代の素行まで問題視されて、米国のみならず国際社会にも大きく注目された。
10月初め、連邦捜査局(FBI)の捜査結果も踏まえて、結局上院議会で承認され、同判事は目出度く最高裁判事に就任することとなった。
米国ではこのように、大統領が推薦した最高裁判事候補者を議会が承認するという手続きがとられ、国民の関心も非常に高い。
一方、日本においては、最高裁判事は内閣が任命し、天皇が認証することとなっており、国民、あるいは国民の代表である国会議員が直接関わることがない。
また、最高裁判事の国民審査が10年毎に行われることになっているが、同時に行われる衆議院議員総選挙の陰に隠れてしまいがちで、必ずしも国民にとって、裁判官毎の厳密な審査が行われているかどうかは見えにくい。
更に、最高裁判事以外の下級裁判所裁判官は最高裁意向で任命されることから、民間企業同様、採用・昇進等の人事権が最高裁(上層部)に握られていると言えなくもない。
そこで、巷間では、“ひらめ裁判官”と揶揄する人もおり、本来の裁判官の信義則である「自由心証主義」(注後記)からずれて、上級審が好ましいと思われる判決を下す傾向があることから、そう呼ばれる場合もある。
ただ、裁判官にとって同情すべきは、事件総数に対して、裁判官の数が圧倒的に不足していることであろう。
すなわち、2001年の司法制度改善審議会の提案に基づき、法曹人口の増加が促進されて、2018年度における裁判官総数(最高裁、及び簡易裁判所含めた下級裁判所合計)は3,866人と、直近5年で130人余り増えている。
しかしながら、2011~2013年時のデータ(3ヵ年平均値)であるが、他主要国と比べて、裁判官の絶対数及び人口10万人当りの人数が極端に低く、事件処理に追われている実情となっている。
従って、日本の裁判官にとって、国民の目よりも、1件でも多くの事件を扱うこと(控訴等をされない判決を書くこと)が、裁判官の出世に関わってくる風潮にあることは否めないとみられる。
(注)自由心証主義:訴訟法上の概念で、事実認定・証拠評価について裁判官の自由な判断に委ねることをいう。 裁判官の専門的技術・能力を信頼して、その自由な判断に委ねた方が真実発見に資するという考えに基づく。 法定証拠主義(恣意的な判断を防止するため、判断基準を法で定めること)の対概念をなす。
閉じる