ブラジルでは7日、テメル大統領の任期満了に伴う大統領選挙の投票が実施され、即日開票された。元軍人で極右・社会自由党のボウソナロ下院議員が46.7%の票を獲得して1位となったが、過半数には届かず、28日に行われる決選投票で、2位の左派・労働党のアダジ元サンパウロ市長との間で大統領の座を争うこととなった。
民主運動党のテメル現大統領は、ルラ元大統領の後継者のルセフ前大統領が、2016年に政府会計の不正を問われ弾劾されて失職したことを受けて就任したが、高い失業率や公的債務の増加、インフレや記録的な犯罪率の高さなどで、不人気のまま年末に任期を終える。その後任者を選ぶ今回の選挙は、最も二極化した選挙の1つだった。7日には、連邦や州の議会選挙も併せて行われたが、両候補によって生まれた深い分断があらわになった。
ボウソナロ候補は63歳、SNSを巧みに利用し、犯罪の抑制などを公約に掲げたが、過激な発言などにより、「ブラジルのトランプ」とも呼ばれる。ボウソナロ氏を支持する人々は、相次ぐ汚職に有権者がうんざりしているブラジルには、変化が必要と強調する。
同氏に対しては、その女性、同性愛者、貧困者などを中傷する発言や、1964~85年に同国を支配した軍事独裁政権への郷愁を物おじせず表す姿勢に対し、多くの有権者が不快感を表し、激しい抵抗を見せている。
決選投票を争うアダジ候補は55歳、28.5%の票を獲得し、2位となった。アダジ氏は、汚職で収監され、裁判所の判断で立候補できなくなったルラ元大統領に代わり、労働党の候補者となった。
アダジ氏も自身の課題を抱えている。労働党の候補者として、2014~16年のブラジル最悪の景気後退や、相次ぐ汚職事件を招いた同党を非難する有権者の明らかな失望と怒りの矛先が向けられるからだ。しかし、世論調査でアダジ氏は、第1回投票で敗れた候補の票も取り込み、決選投票でボウソナロ氏と互角に渡り合うとみられている。
ブラジルの富裕層は、ボウソナロ氏の犯罪の抑制や汚職の防止、民営化による公的債務削減などの公約を支持している。これに対し貧困層は、2003~10年のルラ元大統領の時代への回帰を求めており、アダジ氏にその夢を引き継いで欲しいと考えている。こうした二極化した有権者の決戦投票による選挙結果は接戦が見込まれ、最終的にどちらの候補が勝利するにせよ、イデオロギー的に反感を持つ大勢力に向き合っていかねばならない。
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