トランプ米政権は21日、気候変動対策としてオバマ前政権時代に定められた発電所の二酸化炭素(CO2)排出量規制に代わる新基準案を公開した。各州に対し、石炭火力発電所に関する独自規則を策定する裁量を与えるなど、規制を緩和する内容となっている。
米環境保護局(EPA)は21日、オバマ政権時代の2015年に策定されたCO2排出量の規制「クリーン・パワー・プラン(CPP)」に代わる新基準案「アフォーダブル・クリーン・エネジー・ルール」を公開した。CPPは、地球温暖化に対処するため、発電所のCO2排出量を2030年までに2005年の水準から32%削減することを目標としていたが、州などの提訴により、2016年に連邦最高裁が実施の差し止めを命じていた。
新基準では、各州に石炭を燃料に利用する火力発電所の効率性改善に向けた計画の提出を義務付けている。連邦政府はCO2排出量に関するガイドラインを設定するが、州は発電所の経過年数や設備刷新のコストなどを勘案し、ガイドラインよりも緩めの基準を設けることも可能としている。
EPAのアンドリュー・ウィーラー長官代行は、「トップダウンで杓子定規な連邦の規制の時代は終わった。」と述べた。EPAは、新基準は年間4億ドル(約442億円)の経済的な恩恵をもたらし、2025年までに電気料金を最大0.5%引き下げると予測している。また、2025年までに石炭の生産が最大5.8%増加すると見込んでいる。
一方で、21日に公表された文書によると、CO2排出量はオバマ政権時代のCPPの目標を上回り、大気汚染に関連した早期の死亡や入院、学校の欠席、喘息や心臓病による発作の症例などが2030年までに増加する可能性があるという。但し、EPAは同時に、電力業界では既にクリーン・エネルギーの燃料への移行が進んでいるため、新基準の下でも、業界全体での排出量は、CPPの目標と同様になるとの見解も開示した。
これに対し、環境団体などはCO2排出量の増加に対する懸念を示し、環境破壊や健康被害などの悪影響が出ると批判しており、ニューヨーク、バージニア、カリフォルニアの各州の司法長官は、基準が法制化されれば、実施の差し止めを求め提訴する意向を示した。
EPAは新基準案につき、パブリック・コメントを募集中である。年内に最終的な規則を確定する見通しだ。
閉じる