【Globali】
EUは、アルストムとシーメンスの合併計画が競争原理に反しないかにつき、審査を開始した(2018/07/14)
7月13日にEUの欧州委員会は、アルストムとシーメンスの2つの企業が合併することで設備供給(鉄道車両など)の競争原理が崩されることはないかにつき、審査を開始した。
欧州委員会はヨーロッパにおいて競争原理が正常に機能しているか、独占的になっていないかを取り締まる「警察隊」の役割をはたしてきた。その経緯から、2社の合併について、欧州委員会が昨日7月13日に開かれ、委員会のコミュニケで、「鉄道車両や交通信号システムなど同種の製品を製造する2つの会社が合併することで、競争原理が損なわれないかを危惧している」と表明した。
アルストムはフランスの高速鉄道TGVの車両を製造している一方、シーメンスはドイツの高速鉄道ICEの車両を製造している。...
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欧州委員会はヨーロッパにおいて競争原理が正常に機能しているか、独占的になっていないかを取り締まる「警察隊」の役割をはたしてきた。その経緯から、2社の合併について、欧州委員会が昨日7月13日に開かれ、委員会のコミュニケで、「鉄道車両や交通信号システムなど同種の製品を製造する2つの会社が合併することで、競争原理が損なわれないかを危惧している」と表明した。
アルストムはフランスの高速鉄道TGVの車両を製造している一方、シーメンスはドイツの高速鉄道ICEの車両を製造している。両社は3月末に中国のCRRC社やカナダのボンバルディエ社に対抗するため、車両部門合併の合意に調印した。
EUとしては、この合併が列車車両を購入する鉄道会社にとって、市場独占により車両の選択が限られるとか、購入価格の上昇が起こらないか、列車利用者に不利益が生じないかにつき詳細に調査するようである。欧州委員会としては詳細調査の結論を今年11月21日には発表する予定である。
6月8日時点の情報では、アルストムとシーメンスの両社とも、予定している2019年上半期の合併時期が遅れる可能性を匂わせている。理由はEU当局に提出するのに必要な合併通知書類とヨーロッパ各国での営業データの取りまとめ作業に時間がかかっているためのようである。
なお、両社の合併について、フランス国内では反対の意見が多く上がっている。
すなわち、政界の方からは、「フランス工業界の華であるアルストムをドイツの企業に管理されるのは耐え難い」とか労働組合の方からは、「アルストムの従業員が削減され、フランスのアルストム工場の一部が閉鎖に追い込まれる危険がある」との見方がある。逆に、ドイツでは合併について冷静に、好意的に受け止められており、ヨーロッパの鉄道に対して、メリットがあるとかドイツにとって有益であるとの意見が多い。
今回のアルストムとシーメンスの合併について、フランス、ドイツの国民感情が全く正反対であるので、今後、どういう風に合併問題が決着するか、気になるところである。
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