今週、米メリーランド州の地方紙の事務所で銃撃事件が起こり、ジャーナリスト7人が死傷した。これで、今年に入ってから殺害されたジャーナリストは、世界で46人に上る。昨年、犠牲になったジャーナリストは48人であったことから、ジャーナリスト受難は今年も続き、悪化の一途を辿っている。
6月28日付
『ワシントン・ポスト』紙:「アナポリス(メリーランド州)の銃撃事件は、ジャーナリスト受難の状況が更に悪化している証し」
米北東岸のアナポリス(メリーランド州)で6月28日、地元新聞社に銃を持った男が乱入し、7人を死傷させる事件を起こした。
これで、今年になって殺害されたジャーナリストの数は世界で46人となる。
非営利団体のジャーナリスト保護委員会(CPJ、注1後記)によると、2017年には48人のジャーナリストが取材や執務中に犠牲になっているという。...
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6月28日付
『ワシントン・ポスト』紙:「アナポリス(メリーランド州)の銃撃事件は、ジャーナリスト受難の状況が更に悪化している証し」
米北東岸のアナポリス(メリーランド州)で6月28日、地元新聞社に銃を持った男が乱入し、7人を死傷させる事件を起こした。
これで、今年になって殺害されたジャーナリストの数は世界で46人となる。
非営利団体のジャーナリスト保護委員会(CPJ、注1後記)によると、2017年には48人のジャーナリストが取材や執務中に犠牲になっているという。
同年には、拘束・投獄されたジャーナリストが史上最高の262人にも上ったためもあり、ジャーナリスト受難の年と言われたが、今年も悪化傾向にあるとみられる。
特に、その背景として問題視されるのは、国境なき記者団(RWB、注2後記)が毎年発行している「世界報道の自由度ランキング」によると、2018年ランキングでは、北欧の数ヵ国を除き、欧州における自由度ランキング下落が大きく、また、本来民主主義の先進国である米国などで、民主主義を実証する物差しであるメディアを蔑んだり、攻撃したりする傾向が強く出てきていることである。
●米国:2017年の43位から45位に下落。トランプ大統領のメディア敵対等が評価下落の理由。
●インド:136位から138位に下落。ナレンドラ・モディ首相が2002年の暴動に関わったとのスキャンダルを暴いた本を出版しようとした女性ジャーナリストのゴーリ・ランケシュ氏が、何者かによって自宅玄関で殺害。この事件詳細を報道しようとした同じく女性ジャーナリストのラナ・アユブ氏に対し、根拠もなく彼女を“イスラム過激派の性奴隷”と呼んだり、ポルノ女優の写真に張り替えたり等のハラスメントが頻発。国連の人権特別報告者の多くが今年5月、アユブ氏の生命が“危険に曝されている”との報告を発表。
●スロバキア(中欧):17位から27位に大幅下落。今年2月、同国政府の汚職疑惑を取材していたジャン・クチアック氏が殺害。民衆によるデモ運動に発展し、結果、同国首相は退陣。
●マルタ(南欧):47位から65位に大幅下落。昨年10月、パナマ文書に基づいて同国政府の腐敗を追及していた女性ジャーナリストのダフネ・カルアナ・ガリチア氏が、車に仕掛けられた爆弾で謀殺。
(注1)CPJ:ジャーナリストの権利を守り、世界各国の言論弾圧を監視する目的で創設・運営されている非営利団体。1981年に設立。本部はニューヨーク。
(注2)RWB(フランス語はRSF):言論の自由の擁護を目的としたジャーナリストによる非政府組織。1985年設立。本部はパリ。
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