調査会社ローディウム・グループが先週20日に発表した報告書によると、今年1~5月の中国の対米投資は、過去7年で最低水準の総額18億ドル(約1,970億円)となり、前年同期比で92%も減少したことが判明した。
中国企業は長年にわたり、対米投資額を拡大し続け、両国の経済関係は緊密化していた。しかし、米中両国間の輸入制限措置の応酬が貿易戦争の懸念を呼び、米規制当局が中国企業による買収などへの監視体制や、投資環境への締め付けを強化する動きがある中で、中国の対米投資は劇的に減少した。
ローディウム・グループの報告書の執筆者は、中国企業の警戒心が高まっているとして、「トランプ政権の中国との経済関係に対する強硬姿勢により、中国企業のマインドに、米国での自らの立ち位置に関する疑念が投げかけられている。...
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中国企業は長年にわたり、対米投資額を拡大し続け、両国の経済関係は緊密化していた。しかし、米中両国間の輸入制限措置の応酬が貿易戦争の懸念を呼び、米規制当局が中国企業による買収などへの監視体制や、投資環境への締め付けを強化する動きがある中で、中国の対米投資は劇的に減少した。
ローディウム・グループの報告書の執筆者は、中国企業の警戒心が高まっているとして、「トランプ政権の中国との経済関係に対する強硬姿勢により、中国企業のマインドに、米国での自らの立ち位置に関する疑念が投げかけられている。」と述べている。
外国企業の米国への直接投資に関する国家安全保障への影響やリスクを検討する「対米外国投資委員会(CFIUS)」は、財務長官が議長を務める省庁間委員会であるが、トランプ政権下でその活動が従来以上に活発化している。専門家によれば、著作権保護や安全保障の観点から、高度に機密性のある技術や、米国人の個人データに外国企業がアクセスする可能性がある提携事業について綿密に調査する一方で、審査件数が大きく増加した。
これにより中国の投資家が関与する大型案件の幾つかが、今年前半に中止されている。CFIUSは2018年1~5月に総額20億ドル(約2,190億円)以上の買収案件を認めず、「CFIUSや他の米規制当局も、現在中国の投資家の大きな障害になっている。」とローディウム・グループは説明している。
報告書はまた、中国による海外投資の抑制も要因の1つであるとした。中国政府は約1年半前、大規模な複合企業に対し、過剰な投資を禁じる措置を導入した。2017年8月には、不動産、ホテル、娯楽産業などの業界の企業による海外投資の制限を発表している。
さらに中国企業に関し報告書は、「投資を減らすだけでなく、2018年にはこれまでに例のないペースで資産を処理している。」と指摘している。2018年1~5月に中国企業は、約96億ドル(約1兆500億円)の米国資産を売却して手放したが、これに加えて40億ドル(約4,380億円)分について売却交渉中であるという。
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