学術誌「デモクラティゼーション(Democratization)」に21日に掲載された研究によると、世界人口の約3分の1が、民主主義が後退している国々に居住していることが判明した。論文では、「2017年には、世界の殆どの人々がなお民主主義国家で暮らしているが、26億人が暮らす24カ国で民主主義が後退している。」と報告されている。
本研究は、民主主義が後退している国として、米国、ロシア、インド、トルコ、ブラジル、ポーランドなどを挙げた。行政に対するチェックが弱められ、独裁的な統治へと向かっているのは、主にこれまで民主主義的だった地域であり、特に西欧、東欧、米国などでその傾向が著しいとしている。
1970年代末から2012年頃までは、民主主義国家へ移行する国に住む人の割合は徐々に増加したが、それ以降は逆行している。...
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本研究は、民主主義が後退している国として、米国、ロシア、インド、トルコ、ブラジル、ポーランドなどを挙げた。行政に対するチェックが弱められ、独裁的な統治へと向かっているのは、主にこれまで民主主義的だった地域であり、特に西欧、東欧、米国などでその傾向が著しいとしている。
1970年代末から2012年頃までは、民主主義国家へ移行する国に住む人の割合は徐々に増加したが、それ以降は逆行している。研究は、2017年には、「1991年のソ連崩壊直後の民主主義の水準に戻ってしまった。」「最近の6年間だけでも、残念なことに、我々は25年間過去に引き戻された。」などと指摘した。
論文の筆頭執筆者でスウェーデン・ヨーテボリ大学の政治学者アナ・ルーマン氏は、「メディアの独立性、表現の自由、法の支配が非常に大きく衰退している。」と述べ、「この懸念すべき傾向により、世界中で選挙の意義が失われる。」と警告した。同氏によれば、自由民主主義が前進している国々より、後退している国々の方が、総人口が遥かに多い。
今回の研究は、世界202カ国の約3,000人の専門家が、半世紀に及ぶ膨大なデータをまとめた同大研究機関の「V-Dem」と呼ばれるデータベースの最新版に基づく。これは世界約180カ国について、民主主義制度が強健な順に、「自由民主主義国」「選挙民主主義国」「選挙独裁主義国」「閉鎖的独裁主義国」の4種類に分類し、状況変化を追跡している。
過去10年間で20カ国がV-Demの分類を1ランク落としており、ハンガリー、ポーランド、リトアニア、スロバキアのEU圏4カ国と、イスラエル、モーリシャス、南アフリカが「自由民主主義国」から「選挙民主主義国」となるなど世界的に民主主義が後退した。
世界的傾向に抵抗する唯一の地域がアフリカだ。10年間で民主主義が前進した17カ国中、チュニジアが唯一独裁制から「自由民主主義国」に、ギニアビサウ、コートジボワール、マラウイ、ナイジェリアは「選挙独裁主義国」から「選挙民主主義国」に移行した。
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