世紀の出来事ともてはやされた米朝首脳会談が終わった。両首脳は、それぞれの理由から大きな成果と自画自賛するが、日本を含めた西側諸国のメディアは、非核化のロードマップ(行程表)が具体的に描かれていないと厳しい目を向けている。そして今度は、米軍高官、民主党議員、更に欧米メディアが、北朝鮮における大粛清に関わった北朝鮮軍高官にトランプ大統領が敬礼をしたとして、相変わらず事の重大さが判っていない大統領だと酷評している。これにはホワイトハウスも、一国の首脳として相手国の高官に敬意を表するのは当然のことだと、苦しい釈明をしている。
6月14日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「ホワイトハウス、トランプ大統領が北朝鮮軍高官に敬礼したことを咎められて釈明に必死」
金正恩(キム・ジョンウン)委員長の指示の下、北朝鮮軍の高官らはこれまで、市民や他の軍将校を含めた340人余りを、非人道的かつ残忍な方法で粛清している。
そしてドナルド・トランプ大統領は今週、あろうことかその内の一人の北朝鮮軍高官に敬礼をしたことが判明した。...
全部読む
6月14日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「ホワイトハウス、トランプ大統領が北朝鮮軍高官に敬礼したことを咎められて釈明に必死」
金正恩(キム・ジョンウン)委員長の指示の下、北朝鮮軍の高官らはこれまで、市民や他の軍将校を含めた340人余りを、非人道的かつ残忍な方法で粛清している。
そしてドナルド・トランプ大統領は今週、あろうことかその内の一人の北朝鮮軍高官に敬礼をしたことが判明した。
北朝鮮国営メディアが、金委員長の権威を高めるために制作した、シンガポールの米朝首脳会談の様子を映したドキュメンタリーの中に捉えられていたものである。
ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は、公式記者会見でこの問題について詰問されて、他国の軍高官から敬礼されればそれに応えるのは通例のことだとした上で、同大統領は金委員長との会談において、北朝鮮の人権問題も討議していると釈明した。
ただ、慣例で軍高官に敬礼を返すのは、1980年代のロナルド・レーガン大統領の時代まで遡ることである。
かつて、バラク・オバマ前大統領が、コーヒーカップを持ちながら挨拶したと批評され、ビル・クリントン元大統領は、グダグダな敬礼をしたと非難された。
また、ジョージ・ブッシュ元大統領は、愛犬を抱えたまま敬礼をしたことがある。
そして今回米国の大統領が、微笑んでいる独裁者の前で、北朝鮮軍高官に敬礼をしたというのは、初めてのケースである。
この行為に対して、かつてイラク戦争に従軍したこともあるポール・イートン少将は、北朝鮮高官に対しても、外交辞令としての挨拶は必要だろうが、敬礼をするなど全く馬鹿げたことだと強く非難した。
同少将は更に、独裁政治下の粛清等、反人道的な行為を糾弾すべきことであるのに、米大統領が当該軍高官に敬礼してしまっては、人権問題の重要性が全く相手に伝わらないことになるとも付言した。
なお、トランプ大統領はかつて、30年近く前に中国で民主化運動のデモ隊数百人が殺害された際(天安門事件)、中国政府の対応を称賛している。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AFP通信』配信):「トランプ大統領が北朝鮮軍高官に敬礼したことで物議を醸す」
6月14日に流された北朝鮮国営メディアの映像によると、金委員長が北朝鮮軍高官を紹介したところ、同高官が敬礼をしたのに対して、あろうことかトランプ大統領が敬礼を返していたことが判明した。
この行為に対して民主党のクリス・バン・ホールン上院議員は、米大統領が敬礼をしたとして、北朝鮮は疑いもなく自国の宣伝に使うだろうとツイートした。
同議員は更に、この光景をみた金委員長は、用意していた妥協案をしまい込み、何ら具体的な約束をする必要はないと考えたはずだとした上で、カナダでのG-7首脳会議で同盟国代表に対して不愉快な態度を見せたにも拘らず、北朝鮮を称賛するような対応を見せるなど、全くばかげたことだと非難した。
なお、共和党陣営はかつて、オバマ前大統領が2009年に日本の天皇に謁見した際、頭を垂れたと非難し、また、同年にサウジアラビアのアブドゥッラー国王に頭を下げたことに対しても、卑屈すぎると攻撃している。
閉じる