米首都ワシントンの連邦地裁は12日、米通信大手AT&Tによる米総合メディア・娯楽大手タイム・ワーナーの買収計画を、反トラスト法(独占禁止法)に違反するという司法省の主張を退け、条件を付さずに承認した。
AT&Tは現在米国で最大手の電話会社、有料衛星・ケーブルテレビ事業者である。同社は2016年10月にタイム・ワーナーの買収計画を発表した。買収額は854億ドル(約9兆4,400億円)。世界の通信・メディア・娯楽業界では4番目、全業界を通じても12番目に大きな買収劇となる。
これが実現すれば、ケーブルテレビ局HBO、ニュース専門局CNN、映画のワーナー・ブラザーズ等、タイム・ワーナー傘下の膨大なコンテンツと、AT&Tのモバイルでの動画配信網等のサービスが統合され、巨大複合メディアが誕生するとして注目されていた。...
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AT&Tは現在米国で最大手の電話会社、有料衛星・ケーブルテレビ事業者である。同社は2016年10月にタイム・ワーナーの買収計画を発表した。買収額は854億ドル(約9兆4,400億円)。世界の通信・メディア・娯楽業界では4番目、全業界を通じても12番目に大きな買収劇となる。
これが実現すれば、ケーブルテレビ局HBO、ニュース専門局CNN、映画のワーナー・ブラザーズ等、タイム・ワーナー傘下の膨大なコンテンツと、AT&Tのモバイルでの動画配信網等のサービスが統合され、巨大複合メディアが誕生するとして注目されていた。
AT&Tなどの衛星放送・ケーブルテレビ会社は、市場が停滞し、多くの消費者が高額な視聴契約から離れて、ネットフリックス、グーグルなどが提供する動画配信サービスを利用する中で、新たな収入源を必要としているが、今回の買収にはそうした狙いがあった。
トランプ米大統領は、大統領候補だった2016年に本計画が発表されると、これを公然と非難し、その阻止を公約した。大統領となってからは、CNNやその報道内容を、ツイッター等で「偽ニュース」などとして、繰り返し攻撃している。
米司法省は昨年11月、AT&Tのタイム・ワーナー買収は、競合するケーブルテレビ局に対し、AT&Tに不公正な優位性を与えるとして、買収の中止を求める訴訟を起こした。多くのケーブルテレビ局は、現在タイム・ワーナー傘下のCNNやHBOなどのコンテンツに依存している。司法省は本買収が成立すると、健全な競争を大きく阻害し、技術革新も進まず、価格高騰をもたらす危険性があるため、反トラスト法違反であると主張した。
多くのアナリストらは、AT&Tの主張が認められるが、何らかの条件が付けられるものと考えていた。しかし、連邦地裁のリチャード・レオン判事は、条件を付さずに本買収計画を承認した。同判事は、「政府は挙証責任を果たせていないとの結論に達した。」として、政府に対し、今回の裁判所判断の差し止めを求めないよう促し、そうすることは「明白に不当」であり、成功する可能性は低いと指摘している。
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