国連のフィリップ・アルストン特別報告者はこのほど、米国での貧困は、トランプ政権の下で拡大・深刻化しており、数百万人もの貧困層からセーフティーネットを奪う一方、富裕層に報いる政策が取られているとの内容の報告書をまとめたことを明らかにした。
アルストン氏はニューヨーク大学ロースクール教授。経験豊富な国連の専門家であり、現在は極度の貧困と人権に関する特別報告者を務めている。今回同氏は、米当局者に対し、「貧困層を罰し、拘束する」のではなく、信頼できる社会的保護を提供し、根本的な問題に対処するよう求めるとともに、手を打たなければ「アメリカン・ドリーム」が「アメリカン・イリュージョン(幻想)」に終わると警告した。
報告書において同氏は、トランプ大統領の税制改革によって、生活保護の受給や健康保険への加入が困難になる一方で、大富豪や大企業に予想外の金銭的利益が与えられ、さらなる不平等が醸成されていると指摘している。...
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アルストン氏はニューヨーク大学ロースクール教授。経験豊富な国連の専門家であり、現在は極度の貧困と人権に関する特別報告者を務めている。今回同氏は、米当局者に対し、「貧困層を罰し、拘束する」のではなく、信頼できる社会的保護を提供し、根本的な問題に対処するよう求めるとともに、手を打たなければ「アメリカン・ドリーム」が「アメリカン・イリュージョン(幻想)」に終わると警告した。
報告書において同氏は、トランプ大統領の税制改革によって、生活保護の受給や健康保険への加入が困難になる一方で、大富豪や大企業に予想外の金銭的利益が与えられ、さらなる不平等が醸成されていると指摘している。
米国における極貧の問題は、今に始まったことではなく、アルストン氏は、1960年代のリンドン・ジョンソン大統領時代の貧困撲滅計画以来、米国の政策は、問題に対し、せいぜい無関心な状態が続いていただけだったと説明した。
同氏は「この1年で追求された政策は、最貧困層から基本的な保護を奪い、失業者を罰し、基本的な医療でさえも市民の権利ではなく、獲得すべき特権とするよう、意図的に立案されているように見える。」と語る。昨年12月に米議会で成立した税制改革法案は、米国が依然として世界の先進諸国中、最も不平等な社会であることを決定づけたという。
アルストン氏は米国勢調査局のデータを引用し、米国では12.7%にあたる約4,100万人が貧困の状態にあるが、この内1,850万人が極貧状態に陥っていること、子供は3人に1人が貧困状態にあり、ホームレスの20%超が子供であること、米国は先進工業国の中で、最も若者の貧困率が高く、幼児の死亡率が50%高いことなどを説明した。但し、データは2016年までのもので、トランプ大統領の就任前後で比較したものはない。
同氏は今月中に国連の人権委員会で報告を行う。これに対し、ホワイトハウスは特にコメントを発表していない。ジュネーブの米当局者が、「トランプ政権は、全ての米国民に経済的な機会を提供することを優先事項としている。」とだけ述べた。
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