カナダのトロント大学の物質科学科のデ・ルナ博士は自然界で植物が光合成反応により太陽光のもとで水とCO2を吸収して、でんぷん等の物質と酸素を生産することにヒントを得て、再生可能エネルギー（太陽光パネルや風力で発生した電気エネルギー）の利用のもとで水とCO2から酸素および有用な物質、例えば燃料、化学品原料を生産することを試みている。

これはCO2回収／燃料転換技術（CCC）と呼ばれ、CO2回収／貯蔵技術（CCS）に比べ、CO2が蓄積されず、そのまま新たな燃料または他の物質の生産に利用されるのでCO2を地中に戻す必要がない。デ・ルナ博士によれば、CO2による地球温暖化対策には、CCCは現在実用化されているCCSに比べて、CO2を地中に戻す圧縮機設備や地中貯蔵岩盤も不要なため、設備コストが安くなり、CCSにとってかわることが可能とのことである。...

これはCO2回収／燃料転換技術（CCC）と呼ばれ、CO2回収／貯蔵技術（CCS）に比べ、CO2が蓄積されず、そのまま新たな燃料または他の物質の生産に利用されるのでCO2を地中に戻す必要がない。デ・ルナ博士によれば、CO2による地球温暖化対策には、CCCは現在実用化されているCCSに比べて、CO2を地中に戻す圧縮機設備や地中貯蔵岩盤も不要なため、設備コストが安くなり、CCSにとってかわることが可能とのことである。

発電所で現在使用している化石燃料の石炭、石油もしくはガスは発電所で燃やされ大気中にCO2を放出して、地球温暖化の原因となる。そのため、CCS技術では発電所排ガス中のCO2成分を分離後、地中深い岩盤に貯蔵してCO2大気放出を防ぐ。　一方、CCC技術では発電所で回収CO2から得られた燃料を使用するので原理的には新たなCO2は大気中に放出されない。CCC技術はまだ研究途中にあり、5-10年後には商業化されるものと期待されている。

しかし、デ・ルナ博士によれば現時点でいくつかの問題を抱えているとのことである。CO2を燃料に変える転換化学反応をおこなわせる電極触媒が高価であること、電極反応装置の規模が実験室スケールの小型設備にとどまっていて、今後、商業規模にスケールアップするためには解決すべき問題が多く残されていることなどである。

現在、日本などの工業先進国では、安全性の見地から原子力発電所の運転が縮小される傾向があり、原子力発電で減少した電力量を補うためには、短期的な対策としては化石燃料を使用した火力発電所に頼ることになる。CCS技術を使用してCO2回収／貯蔵を行っている発電所は、設備が高価となるため実施例が少ない。

CO2による地球温暖化対策のため、設備コストがCCSに比べて安価となることが予想されるCCC技術の早期の実用化が望まれる。