査定内容を詳述する中国の文書は、ワシントンの倫理と責任に関する市民(Citizens for Ethics and Responsibility in Washington:CREW、監視機関)によって公表された。同グループによると、大統領の娘でホワイトハウスのアドバイザーを務めるイヴァンカ氏は、すでに中国で商標を取得しており、審査中のものも複数ある。トランプ大統領は中国で100以上の商標を取得している。
先月、米国政府は、北朝鮮とイランに対する制裁措置に違反して米国製品や技術を輸出していたとして、米企業からZTEが部品を輸入することを7年間禁止する措置を出した。2017年に出願されたイヴァンカ氏の5件の商標申請は、5月7日に認可された。14日、トランプ大統領は、ZTE救済を商務省に指示したという驚きの発表をした。
イヴァンカ・トランプ・マークス社が受理した最新の登録査定には、バスマット、織物、ベビーブランケットなどの製品に商標を使用することが認められている。イヴァンカ氏は、父親のアドバイザーを務めているため会社経営から退いているが、引続き事業の利益は得ている。
過去3カ月間で、中国で出願した13の商標登録と8の暫定商標登録が査定を受けた。専門家によれば異例の速さである。『ニューヨークタイムズ』紙によると、イヴァンカ氏は世界で2番目に大きな経済圏において、34の商標権を所有している。中国で大きく事業展開を行っていないものの、米国の輸入品のほとんどは中国から出荷されている。衣類は、大統領の父が課した強硬な関税政策から対象外の分野である。「トランプ大統領は安全保障や貿易に関する問題で中国と争っているが、家族や企業は好景気で将来有望な中国マーケットで利益を上げようとしている。」と同紙は書いている。
CREWのノア・ブックバインダー事務局長は、『AP通信』に対し、このタイミングでの発表は「腐敗という重大問題を提起させる、なぜならイヴァンカ氏が自分や大統領という立場を利用して利益を得ている、もしくは事業に対する米国の扱いがイヴァンカ氏のアドバーザーとしての仕事に影響を与える可能性があるからである。」と述べた。
CREW会長で前ホワイトハウス倫理アドバイザーのノーム・アイゼン氏と、選挙資金改革を支持する非営利団体の民主主義21(Democracy 21)の会長であるフレッド・ヴェルトハイマー氏は、公開書簡で次のように書いた。大統領の子供である、イヴァンカ氏、ドナルド・ジュニア氏、エリック氏及び義理の息子ジャレッド・クッシュナー氏は、「取引を追求し、富を蓄積するために、大統領との関係を利用して事業や取引を行っている。」一部の国々は「これを、トランプ大統領のご機嫌を取るための方法と確実にみるだろう。」
トランプ大統領は今年初めに中国との貿易紛争に火を付け、鉄鋼とアルミニウムの輸入に関税を導入し、中国が対米輸入額を2千億ドル引き上げることを要求した。その報復として中国は米国の大豆や豚肉の関税を引き上げた。その後の交渉により、「貿易戦争」は財務長官のスティーヴン・ムニューシン財務長官の言葉を借りるならば、「保留」の状態である。
中でも最も政治的な論争の的となっていたのは、ZTEである。同社は米国製のチップの輸入に依存しており、制裁により破産に追い込まれていた。ZTEが米国の部品を購入し、13億ドルの罰金を支払うことを条件として、トランプ大統領は制裁を解除した。イヴァンカ氏の商標認可と照らし合わせて考えると、中国との単なる和解策以外の見方もできてしまう。
トランプ大統領は「中国と交渉中の大規模な貿易協定と、習近平国家主席との個人的な関係を反映する」ものだとツイッターに投稿し、自身を擁護している。
イヴァンカ氏の代理人は、メディアのコメント要請には答えなかった。
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