声明によると、中国は、米国の3,750億ドルの貿易赤字を「実質的に」削減することに合意し、詳細は後日詰める。非常に曖昧な合意内容となった。
中国が特定の金額を明示しなかったことに注目したい。18日、トランプ大統領の最高経済顧問、ラリー・クードロウ氏は、中国が赤字を「少なくとも」2000億ドル削減することに合意したと記者団に語った。中国は直ちにそれを否定し、翌日、公式声明には具体的な数字を盛り込まなかった。...
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声明によると、中国は、米国の3,750億ドルの貿易赤字を「実質的に」削減することに合意し、詳細は後日詰める。非常に曖昧な合意内容となった。
中国が特定の金額を明示しなかったことに注目したい。18日、トランプ大統領の最高経済顧問、ラリー・クードロウ氏は、中国が赤字を「少なくとも」2000億ドル削減することに合意したと記者団に語った。中国は直ちにそれを否定し、翌日、公式声明には具体的な数字を盛り込まなかった。
米国経済に年間2250~6000億ドルの損失をもたらす知的財産権について、米国は米企業の技術を中国が盗まないよう求めていた。声明では、両国が「協力強化」(特に進展がない場合に用いられる外交上の方言)に同意し、中国は特許法の「関連する改正を進める」と述べた。実現されるかどうかはまだわからない。
声明発表に対する反応は、トランプ大統領の支持者の間でさえ、否定的であった。トランプ大統領の鉄鋼・アルミニウム関税を支持してきた元鉄鋼メーカーのCEO、ダン・ディミッコ氏は、「十分ではない、本気で立ち向かうべき」さらには「大統領は見ていなかったのか、中国が勝利している」と声明の直後にツイートした。フロリダのマルコ・ルビオ上院議員は、「なぜ米関係者はいつも中国の策略にはまるのだろうか」とツイートした。ウォール・ストリート・ジャーナルの貿易担当記者ボブ・デイヴィス氏は「トランプ政権は中国人に搾取されている」とツイートした。
なぜ、中国が優位に立っているように見えるのか。
中国は「譲歩」すると言っても結局やりたいようにやるのである。中国は、急成長する経済と中産階級を持つ。中国の工場や都市はより多くのエネルギーを必要とし、人々はより多くの食料を求めている。よって、中国が米国のエネルギーや農産物の購入を増やすことに興味があると述べるのは当然である。トランプ政権は、輸出額が増えるため米国側の勝利と位置付けているが、中国が輸入を増やすのはもとからほぼ確実であった。
トランプ大統領が中国から得たのは、「中国が米国のどの大統領にも提案できるような取引だ」と、外交評議会の中国専門家、ブラッド・セッツァー氏は語った。「中国はある程度のエネルギーを輸入しなければならず、内需を満たすために動物飼料や肉を輸入する必要がある。」
政府のデータによると、中国政府は、年間約200億ドル相当の米農産物と70億ドルの石油・ガスを輸入している。中国がこれらの輸入を2倍、もしくは3倍に増やしても、貿易赤字削減目標の2000億ドルには届かない。
米国は関税を控えることに合意した。中国当局は、米国が「貿易戦争を開始せず、相互に関税を課し合うことを辞める」ことに同意したと国営メディアに語った。中国のメディアはこれを会談の最も重要な成果と位置付けた。
アメリカのスティーブン・ムニューシン財務長官は、テレビ番組「フォックスニュース・サンデー」に出席し、関税が「保留中」になっていることを発表した。
確かに貿易戦争に発展しないのは良いことであるが、中国の方が関税で損をしていただろうから、トランプ政権が1500億ドル規模の関税を手控えたことにより、中国は「得」をした。
中国は米朝首脳会談に先立ち、影響力を持っている。トランプ大統領は、6月12日に予定されている北朝鮮との首脳会談がうまくいくことを望んでおり、成功すれば米国と世界にとって大きな飛躍となる。中国は、北朝鮮が話題にあるうちは米国は反論しないと予想している。トランプ大統領は、中国の通信機器大手、ZTEへの制裁を見直すことで寛容性を表明した。
中国のもう一つの目標は、米国投資を増やすことである。ムニューシン財務長官は、中国投資の強力な規制に取り組むことになっている。もし中国人が公平に振る舞い、米企業が自由に中国で活動することができなければ、米国は中国企業や資本に門戸を開かないというアピールである。
今のところ中国は優位に立っているが、二国間の貿易交渉はまだ始まったばかりだ。トランプ大統領と習近平国家主席が直接対面すれば多くのことが変わる可能性はある。
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