ドナルド・トランプ大統領は、自身の戦略に則った北朝鮮リーダーとの首脳会談設定が奏功し、長らく懸案だった3人の米国人を北朝鮮から救い出せたと、自画自賛している。安倍晋三首相も日本人拉致被害者の家族も、同大統領に対して、日本人被害者の解放も重要課題に加えるようはたらきかけているが、目下のところ、北朝鮮は日本側の言い掛かりだとして“表向き”取り合おうとせず、具体的成果が期待できるのか覚束ない。これは韓国人拉致被害者家族の心情も同様で、トランプ大統領も文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、北朝鮮の非核化達成が最優先されるとして、果たして北朝鮮側主張を覆してまで拉致被害者案件について詰問するか、甚だ疑問とせざるを得ない状況とみられている。
5月16日付
『NBCニュース』:「トランプ大統領・金委員長会談を前に、韓国人拉致被害者家族はこの問題が忘れ去られることを懸念」
ドナルド・トランプ大統領は5月10日、長らく懸案となっていた3人の米国人が北朝鮮から解放されたことに対して、“素晴らしい成果”だと自画自賛している。
そこで韓国人拉致被害者の家族は、日本の場合もそうであろうが、米国にとって、金正恩(キム・ジョンウン)委員長との首脳会談の重要議題が北朝鮮の非核化に焦点が当てられることになり、拉致被害者の解放問題が忘れ去られることを懸念している。...
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5月16日付
『NBCニュース』:「トランプ大統領・金委員長会談を前に、韓国人拉致被害者家族はこの問題が忘れ去られることを懸念」
ドナルド・トランプ大統領は5月10日、長らく懸案となっていた3人の米国人が北朝鮮から解放されたことに対して、“素晴らしい成果”だと自画自賛している。
そこで韓国人拉致被害者の家族は、日本の場合もそうであろうが、米国にとって、金正恩(キム・ジョンウン)委員長との首脳会談の重要議題が北朝鮮の非核化に焦点が当てられることになり、拉致被害者の解放問題が忘れ去られることを懸念している。
日本の場合は十数名と言われているが、韓国の場合は、朝鮮戦争前後の拉致被害者を含めて、少なくとも516人が北朝鮮に拉致されている。
ソウル在住の黄仁徹(ファン・インチョル)氏は、彼の父である黄圓(ファン・ウォン)氏の解放を求めて17年も運動を続けている。
テレビ・プロデューサーだった黄圓氏は1969年12月、北朝鮮工作員によってハイジャックされた飛行機に乗っていた。しかし、同機に乗っていて韓国に戻れたのは39人のみで、同氏を含めた11人の乗客及び6人の乗務員は、北朝鮮に連れて行かれたままとなっている。
黄仁徹氏は2016年、北朝鮮との秘密の連絡網を通じて、父親が健在であるとの情報を得た。しかし、今年になって歴史的な南北朝鮮首脳会談が開催されたものの、同氏の父親の生死の状況は不明となっている。
黄仁徹氏の懸念は、同首脳会談で平和交渉が最優先され、北朝鮮側として触れられたくない拉致問題については、議題に上らなかったのではないかということである。
『NBCニュース』の問いかけに対して、韓国統一部(省に相当)は、拉致問題は常に重要課題と捉えており、南北首脳会談でも人権問題について共同声明の中に含まれていると回答している。
しかし、黄仁徹氏は、むしろ統一部が、北朝鮮との和平交渉を進捗させるために、北朝鮮側を“怒らせない”よう、拉致問題を持ち出すのを控えさせていると考えられるとしている。
安倍晋三首相も、1970~1980年代に北朝鮮に拉致されたと考えられる十数人の被害者解放について、トランプ大統領に対して優先議題とするようはたらきかけている。
なお、日本人拉致被害者について、北朝鮮は2002年に認めているが、目下のところ北朝鮮は、その時点で解決済みとの主張を繰り返している状況である。
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