最新の研究論文によると、観光産業がこれまでの予測を上回り、世界の温室効果ガス排出量の8%を占める事が分かったという。日本などは観光への投資に力を入れているが、他の経済発展策よりも多くの炭素を排出するため、渡航による影響をオフセットする料金システムへの投資を検討するなど、先進国主導により環境汚染を将来的に減らす対策が不可欠であると指摘されている。国が豊かになると温室効果ガス排出量が増えるため、観光客もその旅行が環境にやさしいか選択を迫られる。
最新の研究によると、観光が世界の温室効果ガス排出量の8%を占める事が分かった。「Nature Climate Change」誌に掲載された論文では、多国籍科学者チームが大西洋横断フライトや安価な土産品に渡るまで、様々な観点から環境への影響を調査した。外食や土産物など消耗品を含む実質的な観光のコストを調べた例は初で、世界貿易機構(WTO)や世界気象機関(WMO)が認識していない点を研究している。189か国の世界観光のフットプリントを交通機関、イベント、ホテル、食べ物、買い物、等の項目で数値化。10億か所の供給元の気象の影響も考慮し、研究は1年半に及んだという。これまでの研究では、特定の地域や観光活動の一部だけを見たものしかなかった。
当然、炭素排出量の多い国は、富や国の大きさにも比例するため米国、中国、ドイツが首位となった。飛行機旅行が主な原因。世界が豊かになるにつれ豪華な旅行へのニーズが高まる。世界の観光産業は年間5%で成長しており、多国籍貿易の成長を上回るペース。
観光に関連する排出量の少なくとも15%は国際フライトや客船旅行に起因し、パリ協定の規制の対象外だ。また、観光による汚染大国である米国のトランプ大統領は、 パリ協定を支持せず、気候変動にも懐疑的な姿勢を示している。
どの経済セクターより観光産業が伸びると見られる今後は、パリ協定に特定の国へのフライトを追加するなどの対策が急務である。飛行機への炭素税や排出取引も今後の排出を減らす上で有効であろう。(例えば、メルボルンから英国に往復で行くと、オフセットのために425ドル以上の追加料金、シドニーとブリスベンの往復で45ドルの追加料金となると試算。)
国の対策には費用がかかる。多くの国では観光は環境に影響が少ないと考え観光発展のため莫大なインフラ投資を進めており、この傾向は日本、ネパール、ハンガリーで顕著で、短期間で観光客を倍増しようと計画している。
だが研究者らは、この考えには誤りがあると指摘する。気温が上昇すると、スキーリゾートや冬の祭典のような雪や氷を呼び物にする観光地は立ちいかなくなる。これらの問題解決には、大国からの資金や技術支援や予防策が必要であると研究チームは述べている。
同日付米国『マッシャブル』は「休暇もカーボン・フットプリント(二酸化炭素排出量)の要因だと分かっていたが、これほど大きいとは」との見出しで以下のように報道している。
観光は国の経済発展と新しい土地を訪れたい人のニーズが合致した得策なのだが、海外旅行には影の部分もある。今週発表された論文によると、 休暇旅行は以前考えられていたよりも多くの温室効果ガスを排出するのだという。ジェット機や自動車エンジンによる直接的排出だけでなく、観光客に食事や支援を提供する何百のサプライチェーンからの排出量も含めると相当な量となり、毎年排出される炭素の8%は観光に起因するのだという。
これまでの研究では、3%と試算されてきた。
今回の論文は、80万年間で最高の二酸化炭素量を記録した1週間に発表された。研究では2009年~13年の交通機関、食事(農作物)、日用品などを調べたが、7割以上の排出は、(ホテルの電力、飛行機エンジンなど)燃料によるもので、残りの排出は、メタンガス(牛の呼気や、ガス会社が石油をくみ上げる時に排出される)からのものであった。
国別排出量は、米国が1位、ドイツ、中国、インドが続く。中間層の台頭が顕著な中国、インドでは旅行に行ける層が拡大するとみられる。経済成長とは海外旅行やぜいたく品を手にすることにつながる。
この研究では、海外旅行へ行く代わりに国内旅行を推奨する。近くを旅行することで排出量を減らす事が出来るとしている。
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