【4日付『USAトゥデー』】　　2日、主治医が署名しているにもかかわらず、実はトランプ大統領が自身の健康診断書の作成に関わっていたとのニュースが流れた。ニューヨーク長老派教会病院の医師でコーネル大学の健康政策研究所の研究者であるドラヴ・クーラー医師が『USAトゥデー』に寄稿した意見を紹介する。

私はこのニュースにまったく驚かない。長年医学の勉強、指導、臨床をしてきたが、私は医師が健康状態を評価する際、「astonishingly excellent(驚くほど優れている)」または、「unequivocally(明らかに)」最も健康だなどと評価するのを見たことがない。通常は、良くて「Unremarkable(普通)」、運が良ければ「low-risk(低リスク)」という判定だろう。

言葉は、医師がニュアンスと不確実性を伝えることができるため、医学において重要である。...

私はこのニュースにまったく驚かない。長年医学の勉強、指導、臨床をしてきたが、私は医師が健康状態を評価する際、「astonishingly excellent(驚くほど優れている)」または、「unequivocally(明らかに)」最も健康だなどと評価するのを見たことがない。通常は、良くて「Unremarkable(普通)」、運が良ければ「low-risk(低リスク)」という判定だろう。

言葉は、医師がニュアンスと不確実性を伝えることができるため、医学において重要である。言葉は正確で責任があるものと考えられている。(政治の逆を考えればよいだろう。)　たとえば患者の腹部が「緊張している」場合は良いが、「固い」場合、医者は心配する。それぞれの症状には異なる意味合い、診断、治療法が必要である。

トランプ大統領が健康診断書の内容を指示したことは、大統領選でヒラリー・クリントン候補の健康を大統領選後半の焦点にした事実によって、皮肉の度合いが強まる。当時クリントン候補は肺炎と診断され、メディアは健康不安をかきたてた。

当時のトランプ大統領はこの話題に飛びつき、クリントン候補が介助されて車に乗り込む選挙広告を出し、彼女は「強靭さ、強さ、スタミナを有していない」と主張した。集会では、「彼女は車までの15フィートの距離を歩く」または「ここに1時間立つ」ことができるのかと疑問を呈した。

前立腺肥大の治療に使用され、育毛効果もあるプロペシアを大統領が服用していることが2月に主治医によって明るみに出た。トランプ大統領の補佐官らは主治医ボーンスタイン医師の診療所に押し入り、カルテを押収し、ボーンスタイン医師がトランプ大統領とともに写っていた額縁写真を待合室から取り除くように命じた。医師と患者の関係はそれとは分からないものになってしまった。

私は、政治家の健康は政治的議論の焦点であってはならないと主張してきた。政治家の健康状態は、敢えて明らかにするようなことではない。過去には最高の大統領が最悪の健康状態ということもあった。我々は、大統領の咳の発作や前立腺の薬を気にするよりも、誠実さと知性を理解するべきだ。

大統領がその任期を健康上全うできるかについて、医師の言葉は慎重で科学的であるべきだ。多くの場合そうではないのは、政治で大言壮語や二枚舌がますます横行しているからだろう。

医学と同様、政治にも言葉は必要である。不用意で、欺瞞と誇張で満たされた言葉は、聞いている方にとっては刺激的かもしれないが、危険である。誠意をもって話せない人は、物事をきちんと考えてはいないはずである。